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  • 日本テクノは「経済成長と省エネの両立」に向け、日々新たな商品の創造とサービスの充実を図っております。このコーナーではその時々の社会事情における企業姿勢を紹介します

個人事業主の活動支援、 職場環境整備、情報発信… ──人材不足の危機に対応

 世界各地で地球温暖化の影響と見られる自然災害が多発している。日本では、台風や豪雨が頻発し、全国で大規模な浸水被害などが後を絶たない。風速や降水量など、過去の記録を塗り替える数値が次々に並び、これまで通りの災害対策では対処が難しい状況となっている。
 当社が保安管理する受変電設備の浸水被害も深刻である。特に昨年の台風15号による被害は大きかった。
 主装置のES SYSTEMから監視センターに届いた停電信号は、3000件を超えた。台風が過ぎ去った後も通信障害の影響で、復旧信号が受けられない、電力データの確認ができない、などの問題が続出した。
  
 当社で高圧受変電設備の管理を行うのは、資格を持った電気管理技術者であり、自然災害などによって不具合が発生すれば、復旧支援に奔走することになる。日常的な電気の安全・安心を確保する役割だけでなく、災害対策の観点からも、電気管理技術者は重要な責務を担っている。
 その電気管理技術者の将来にわたった人材不足が懸念されている。
 工場やビル、店舗などで高圧受変電設備を設置する者は、原則として法律に基づく適切な保安管理を、選任した技術者のもと自ら行わなくてはならない。ただし、電気主任技術者の資格を持ち、その後一定の実務経験を積んだ者や電気保安法人などに、保安管理業務を外部委託することもできる。電気主任技術者1人当たりの外部委託を受けられる件数は、点数制で定められており、設備容量などによって異なるが、おおよそ40〜50件になる。一般的な中小企業では、大部分が外部委託による高圧受変電設備の保安管理を行っている。
 技術者の不足が危惧される原因は、需要側と供給側という2つの側面で存在する。ここで需要側としたのは保安管理を必要とする高圧受変電設備のことで、その設置件数が増加傾向にあるのだ。老朽化したビルの建て替えや都市開発などにより特に業務用の設備が増えている。さらに再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)で太陽光発電が急増した。これも技術者による保安管理が必要な設備である。もう一方の供給側としたのは、電気保安業界への入職者の減少傾向と現役有資格者の高齢化である。
 こうした状況に、管轄する経済産業省も危機感を抱いており、業界をあげての若手育成をはじめ、ポータルサイトの開設など広報活動の拡充により認知度を高め入職者の増加を狙うなどの対策を考えている。

 そして当社でも取り組みは進めている。中心は、資格を持つ定年退職者と業務提携契約を結び、個人事業主としての活動を支援する事業だ。その数は現在、全国で1200人を超えている。点検業務に集中できる環境づくりに配慮しているため、平均年齢68歳でも皆が表情に活気をたたえている。また、資格はあるが実務経験が不足している技術者には、契約社員や嘱託社員として現場実績を積める選択肢も用意している。
 若手や中堅の育成では、高度な知識と経験が得られる自社発電所での勤務という将来に備えるキャリアプランも用意した。さらに今後は全世代に向け、業界の魅力やキャリアプランなどの情報を発信するサイトの構築も検討している。
 現場だからこそ伝えられる情報を発信し続け、電気に関わる人材の確保に貢献したい。それが気候変動による災害対策にも資すると考えている。

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