【第6回】市民も事業者も自治体も一体で「OK と言える街」/鹿児島市

市民へのPRに注力

桜島と錦江湾を望み、温暖な気候が特徴の鹿児島市。地球温暖化対策に早くから取り組んでおり、2008年には環境学習・環境保全活動の拠点として「かごしま未来環境館」をオープンするなど、広く環境保護の重要性を市民に訴えてきた。
 2019年12月にゼロカーボンシティを宣言した際には「取り組みを加速するにあたり、危機感をあおるのでなく、市全体で取り組むことが将来のプラスになるというメッセージを打ち出すために『OK ZERO CARBON CITY KAGOSHIMA 2050』というキャッチコピーをつくり、さまざまなシーンでゼロカーボンへの取り組みを促してきました」と環境政策課課長 小倉和代さんは話す。「OK」というフレーズにはゼロカーボン鹿児島のビジュアル表現のほか、未来に向けて皆でOKと言える街にしていこうというメッセージが込められている。市民も事業者も、そして自治体も一体となって2050年のゼロカーボン達成を目指すための、柔らかくも力強い牽引力となっている。

活動の普及啓発用に鹿児島市が制作したポスター。

省エネ意識は着実に定着

 同市は2021年2月現在、第二次鹿児島市環境基本計画に基づく鹿児島市地球温暖化対策アクションプランを実施している。直近の実施状況報告によれば、2020年は二酸化炭素(CO2)排出量が2013年比目標の12%減に対し、21.7%減と大きく上回っている。九州地方では再生可能エネルギー(再エネ)の導入が進み、さらに原発が再稼働するなど、同じ使用電力量でも他エリアに比べCO2排出係数は減っているが、個別のデータを見ると省エネ意識が定着していることが見て取れるという。
「市内の世帯数が少しずつ増えるなか、世帯当たりのエネルギー消費量は減少してきています。産業部門でも事業所面積当たりのエネルギー消費量が減少しているため、市民の間に省エネ意識は着実に定着していると考えています」(小倉さん)

新たな環境基本計画を推進

 今後2050年のゼロカーボンをめざし、鹿児島市も国と同様2030年で2013年比46%のCO2削減を目標に据える。
「2022年度から始まる第三次鹿児島市環境基本計画では、あわせて第四次鹿児島市一般廃棄物処理基本計画、第二次鹿児島市生物多様性地域戦略、ゼロカーボンシティかごしま推進計画、鹿児島市再生可能エネルギー活用計画を定めるなど、総力を挙げて持続可能な鹿児島市の実現に取り組みます。鹿児島市は再エネのなかで太陽光のポテンシャルが最も高いのですが、現状では導入目標に対し50%程度の進捗となっています。事業所・住宅の屋根上の発電パネル設置を引き続き進めていただくとともに、あわせて電気自動車の導入を促進し、CO2削減を実現したいと思います」(再生可能エネルギー推進課課長 金村博之さん) 大きく目標を上回った2020年のCO2削減量21.7%に対し、10年後にその倍以上となる削減目標を実現するのは容易でない。実現のカギは、あるべき姿から逆算し数字に落とし込む「バックキャスティング」の発想だ。未来の姿を明確にし、今できることを共有することで、市民も事業者も、そして自治体も一体となってOKな都市・鹿児島をめざす。

こぼれ話
鹿児島市のOKというキーワードそのものも(字面の部分ではありますが)ゼロカーボンということを表現しています。OK ZERO CARBON CITY KAGOSHIMA 2050というコピーはいろいろな意味が込められていてよいなと感じました。実は鹿児島市は地球温暖化防止策に取り組むにあたって、環境アドバイザーやプランナーとともに取り組み内容を考案しています。このコピーも、単なる行政から市民へのお願いにしないために、スタイリッシュなデザインで市民を引き付けようという意図があります。広報が上手な自治体という印象を受けました。(記事発表時期:2020年4月)

関連記事一覧