【第9回】京から始まる「2050ゼロカーボン」/京都市
全国初の条例制定
1997年の京都議定書採択を契機として、 地球温暖化対策に注力してきた京都市。2004年に全国で初めて地球温暖化対策に特化した「京都市地球温暖化対策条例」を制定し、産官学民の主体がそれぞれ脱炭素へ取り組んできた。2019年5月に、全国に先駆けて「2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量正味ゼロ」を目指すことを表明するとともに、その目標の実現に向け、2030年までに2013年度比で46%削減することを中期目標に掲げ、取り組みを進めている。
最新実績である2020年度における同市の 温室効果ガス 排出量は620.6万トン-CO2であり、2013年比で20.9%の削減を実現している。内訳を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響もあるが、産業と業務の2部門が減少し、運輸部門は若干減少、家庭部門は増加した。条例では、市内の大規模事業者に対し、温室効果ガス排出量の削減に関する報告などを行う義務や一定規模以上の建築物に対する再エネ導入義務の規定が設けられており、これらの取り組みが先の2部門の成果に結びついたといえそうだ。
「京都市は、2020年12月に条例を改正し、大規模事業者に加え、新たに中規模事業者に対しても、エネルギー消費量等の報告を義務付けました。また、再エネのさらなる普及拡大を図るため、これまで大規模建築物を新築・増築する際に義務付けていた再エネ利用設備の導入について、その義務量を増加させるとともに、その対象を中規模建築物まで拡大するなど、2050年ゼロの達成に向けて取り組みを強化しています。」(京都市地球温暖化対策室 計画・気候変動適応策推進係長 菊田翔一朗さん)。
京都市の温暖化対策計画では取り組みを通じ、温室効果ガスの排出抑制の対策(緩和策)としてライフスタイル、ビジネス、エネルギー、モビリティの4つの分野について、CO2を排出しないものへの転換を進めている。目指す2050年の社会像は「将来の世代が夢を描ける豊かな京都」だ。
2050京創ミーティング
「京都には自然との共生の中で育んできた生活文化や知恵がある。それを新たな技術と融合して、脱炭素を通じた生活の質的向上と経済発展を両立させたいと考えています」(菊田さん)
そうした考え方を象徴する市民活動が「京都発脱炭素ライフスタイル・2050京創ミーティング」だ。これは将来の京都を担う若者を中心とする市民、事業者、学識者らが2050年の京都にふさわしい脱炭素型のライフスタイル像を実現するために、この10 年で必要な目標・アクションを創る活動である。
例えば「使用済み衣服などの回収・再利用を促す」(循環フェス)「生産や流通過程で、まだ食べられるのに廃棄されている野菜を地産地消する」(レスキュー野菜の地域販売)など、市民が自分ごととして脱炭素ライフスタイルを実践するためのプロジェクトを創出・実証している。プロジェクトの成果や、市民・事業者による脱炭素に関する取組などの情報をウェブやSNS等で発信することにより、一人ひとりの意識が変わり、その変化が定着していくことを狙っている。
2030年までに46%削減するという目標への道のりは、2020年の削減実績からみても険しいものである。京都市は、特に家庭における取り組みを推進していくことが、今後の削減率の向上につながると考えている。先を見据えた改革は、周囲を巻き込みながら一歩ずつ前進している。
こぼれ話
一般的な自治体は「地球温暖化対策計画」を立て、これを基に行動し、計画および基準年対比などでどのくらい温室効果ガスが削減できたかを判断します。しかし京都市は計画よりも厳しい「地球温暖化対策条例」を定め、法による行動の変革を求めます。たとえば、国は温室効果ガスの排出量が相当程度多い特定事業者に対し、いわゆる省エネ法でエネルギー使用量及び省エネに関する取り組み状況等の報告義務を定めています。京都市ではそれより踏み込み、業務用の床面積が1000㎡以上の建築物の所有者にも同様の報告義務を定めています。さらに同市では2000㎡以上の建物を新築・増築する際に再生可能エネルギーを導入することを義務付けていましたが、2020年12月の条例改正により、300㎡~2000㎡未満の建物の新築・増築でも導入が義務付けられました。温暖化防止に取り組む本気度が取材を通じてよく理解できました。
日々2児の子育てに奮闘するお父さん。
自然と触れ合うのが何よりも好きです。