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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

一度は諦めた再起、周囲の励ましで前進を決意 Scene 48

安心しておいしく食べられる商品が原点

 「2005年にNPOを立ち上げ、それを法人化した直後、東日本大震災が起きました。仕事をもらっていた会社は、廃業を余儀なくされました。そのとき社長は、自分たちも再起はできないと考えたようです」と株式会社あんしん生活(岩手県陸前高田市)の総務課長・津田佳奈さんは話す。
 NPOは当初、地域の元気な高齢者がやりがいをもって働ける場所を提供したいと考え、水産加工を請け負う場として設立させた。だが震災で発注元を失ってしまう。社長の津田信子さんは、一度は事業再建を断念したが、知人の「今こそ陸前高田市の復興に向けともに尽力しよう」という声に力を得て前進を決意。震災翌年の2012年、NPOを改組し、株式会社あんしん生活を設立した。
 社名には、お客様が安心しておいしく食べられる商品を提供するという思いを込めた。設立と同時に長男の津田勇輝さんとその妻の佳奈さんが入社。勇輝さんは企画部長として販路の開拓や新商品の開発、佳奈さんは総務・経理などの事務を担当している。
 2013年には念願の工場が竣工した。設立当初は三陸の海の幸を使ったかき揚げや、当地で漁獲されたサケのフライといった海産物を中心に冷凍食品を製造していた。

商品はすべて手揚げ。機械任せにせず、熟練の社員が1つずつじっくり揚げ、
鮮度を保ったまま急速冷凍される。


 「震災から10年たちましたが、その間、大きな変化がありました。三陸の漁業の様変わりです。海流の変化なのか、サンマ、サケなどの漁獲量は大幅に減り、値が上がりました。また以前は主要海産物だったホタテ、カキも震災以降、貝毒の影響で出荷量が減り続けています。海産物中心では事業の先行きが見通せず、今はカボチャ、サツマイモ、マイタケなど野菜の天ぷら類を増やしています」と津田佳奈さん。
 一方、コロナ禍での巣籠もり需要が業績を後押ししている。同社の販路は首都圏の生活協同組合などが中心。宅配サービスの需要増から生協の加入者数は増え、野菜を加え豊富になった商品ラインナップが「天ぷらは食べたいが自ら油で揚げるのはちょっと…」というニーズを捉え、前年比135%の売上増になった。「リピーターも増えているので、この機会を生かしたいですね。多様なニーズに対応できるようオリジナル商品の開発に力を入れています」。
 三陸湾の漁獲変化など変わり続ける環境に対し、柔軟に業容を変化させることで、少しずつ前に進んできた。これからも、お客様が安心しておいしく食べられるという原点を大切にしながら、さらなる発展を目指していく。

あんしん生活の皆さん(津田佳奈さんは前列右端)。

こぼれ話

 あんしん生活さまは2017年1月発行の第47号でも紹介させていただきましたが、震災から10年の節目に改めてご登場いただき、取材当時からの変化について伺いました。
 4年前にご登場いただいた際に(https://econews.jp/report/allforjapan/2682/)、津田勇輝部長は「三陸海岸・広田湾の海の幸で商品をつくってこそ真の復興です」とお話しされていました。文中にもあるように現在の三陸海岸の漁業は大きく変わってしまい、目指す復興の姿とは異なりながらも、懸命に今できることをされていらっしゃいます。
 三陸には美味しいカキをつくるためには山からの養分が大事だと考え、山を回って広葉樹を植えた漁師さんがいるなど、三陸という土地に愛着を持ち、その自然の恵みを生かして暮らす方が多くいらっしゃいます。そうした方々は現在の状況をどのようにとらえているのでしょうか。胸が痛みます。
 全国的に見ても沿岸漁業は異変が生じており、温暖な海域の魚がどんどん北上しているそうです。その背景には地球の温暖化問題があるといわれています。温暖化は、私たち一人ひとりが向き合い、解決せねばならない問題なのだと改めて思いました。

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