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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

継続的な活動で表す感謝の気持ちScene 20

 岩手県花巻市にある漬物製造販売の株式会社 道奥(みちのく)。社長は二代目の阿部久美子さん。現会長の先代から引き継いだ社長職だったが業績も思うように伸びず精神的にも追い詰められる日が続いた。そこで起死回生の新商品「青なんばんみそっこ胡瓜」を発売。これが人気を集め売上も回復し始めた矢先、東日本大震災が起きた。
幸い建物や従業員に大きな被害はなかったが、電気が復旧しFAXがつながると流れてきたのは多数のキャンセル通知。観光バスで訪れるツアー客を含め6000名以上の見込みが消え、事業継続そのものが危ぶまれる状況だった。

バスが止まるたび涙が流れた──

 だが、客足は戻ってきた。「復興チームが現地に入る前に立ち寄ってくれたんです。その後はボランティアの方々が来店して、朝食やお弁当、帰りの夕食、お土産まで購入いただきました。駐車場にバスが止まるたびに、自然に涙があふれました」と阿部さんは当時を振り返る。
その誠意に感謝し、自分も被災地に対して支援をしたいとの思いから、わんこそばや炊き出しの提供を行った。だが、会社の規模からして、それを何度も行うことはできない。阿部さんは、「1日3食1年365日のうちの1食を提供しただけで、自分たちが受けた誠意は返せない」と思った。
もっと継続的にできることを求めて情報を集める中で、震災をきっかけに岩手県大槌町と秋田県五城目町との親交が深まったとの情報を得た。震災当日に大槌町の観光ホテルに滞在していた五城目町の老人クラブの一行が、従業員の適切な誘導で全員無事だったことから生まれた絆だという。阿部さんのいる花巻市は、この両町のちょうど中間。両手を広げるようにつながり合うことができる。

「結海」の店内。
円内は株式会社道奥の阿部久美子社長。

こぼれ話

取材中に、阿部さんが涙ぐむ場面がありました。言葉を詰まらせることはなかったですが、多くの方々への感謝への気持ちであることは充分に伝わりました。「何か出来ないか」はみんなが思ったことだと思います。私自身はひとつ実行したことにより、少しは貢献したかなと思いが芽生えました。しかし、阿部さんは、自己満足と感じた。だからこそ、自社の存続も大変なのに、この事業を実施された。なんとかすると腹を括ったときの人間の力強さを感じた取材でした。

追伸:阿部さんの笑顔に元気をもらうことできました。本当に素敵な笑顔でした。

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