• サステナブルノート
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「消灯のリレー」をつなぐ地球規模の環境イベント「アースアワー (EARTH HOUR)」


都会では人々が24時間活動し、明かりがこうこうと光っています。経済活動が活発に行われる一方、発電のための燃料はまだその多くが化石燃料のため、たくさんの二酸化炭素が排出されています。また、人工照明は「光害 (ひかりがい)」といわれる過剰な光による公害も生んでいます。これにより、人の眠りが妨げられるだけでなく、空が明るくなり過ぎることで天体観測に影響が出たり、自然生態系への悪影響が指摘されています。不要な照明はエネルギーを浪費し、地球温暖化の要因にもなるため、照明を減らすことは地球環境の保護につながります。こうした環境問題の啓発イベントのひとつに「アースアワー (EARTH HOUR)」があります。

 
 

アースアワーの概要


「アースアワー (EARTH HOUR)」とは、WWF(公益財団法人世界自然保護基金)が主催する世界最大級の環境イベント。毎年3月の最終土曜日に開催されます。世界中で同じ日・同じ時刻(20:30~21:30)に1時間消灯することで、地球温暖化防止と生物多様性保全への意思を示す取り組みです。2007年のスタート(日本は2010年)から年々規模が拡大し、現在では190以上の国と地域が参加しています。アースアワーは日付変更線に近い南太平洋諸国から順番に「20:30の消灯リレー」で地球を1周します。2023年には、イタリアのコロッセオ、フランスのエッフェル塔、日本では東京タワーや横浜ベイブリッジをはじめとする世界中のランドマーク、施設、企業が参加しました。1時間だけ消灯して過ごすという気軽さから個人でも取り組みやすい活動です。


▶類似イベント①「アースデイ」
「地球のことを考え、行動する日」を合言葉にした地球環境にまつわるイベント
関連コラム:4月22日は「アースデイ」
https://eco-tatsujin.jp/column/vol74_r.html
(省エネの達人『企業編』掲載 省エネコラム)

▶類似イベント② 「キャンドルナイト」
夏至・冬至に行われる、アースアワーから派生した環境イベント
関連リンク:「1000000人のキャンドルナイト」
https://www.candle-night.org/jp/index.html

 

 

アースアワーに地球温暖化と「ネイチャー・ポジティブ」について考える

 

 
地球の気温は、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響により上がり続けています。IPCC(国連気候変動に関する政府パネル)は、もし気候政策を導入せずに化石燃料に依存し続けた場合、世界の平均気温は2100年までに最大で5.7℃上昇するという予想を発表しました。地球温暖化は、海面水位の上昇だけでなく、水不足やインフラ機能の停止など、社会にも深刻な影響を及ぼすとされています。この状況を受けて、日本を含む世界で、大気中に排出される温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現をめざす取り組みが加速しています。アースアワーは「巨大なスイッチオフ」という節電プロジェクトから始まり、今や世界中で消灯するイベントに発展し、地球温暖化対策の重要性を訴えています。
また、2018年からは、自然や生物多様性もアースアワーの重要なテーマとなっています。過去50年で、世界の生物多様性は68%も減少しました。食事はもちろん、医療や産業など、人類の毎日の生活は、自然の恵みがなければ成り立ちません。そこで「ネイチャー・ポジティブ」への取り組みが誕生しました。2020年を基準として、2030年までに生物多様性の減少を食い止め、回復の軌道にのせ、2050年までに自然と共存する世界の実現をめざすものです。具体的には、企業においては、これまでの事業のやり方を今までより環境負荷の少ない方法に切り替えるため、扱う材料を環境負荷の低いものに切り替える、環境を汚染する物質を排出しない設備を導入する、といった取り組みをしています。

 

 
関連コラムはこちら

札幌で最高気温40℃!? このまま地球温暖化が進んだら…
https://eco-tatsujin.jp/column/vol127_r.html
省エネの達人『企業編』掲載 省エネコラム

IPCCが第6次統合報告書を公表 温暖化対策待ったなし
https://econews.jp/column/sustainable/8769/
サステナブルノート

地球温暖化がもたらす気候変動への影響について
https://econews.jp/column/sustainable/9769
サステナブルノート

 
 
関連リンクもご覧ください

▶はじめての 『生物多様性』~今おさえておきたいポイントをわかりやすく簡単に解説https://www.wwf.or.jp/activities/project/5257.html

 

 

国内の取り組み事例とSDGsへの貢献

 

 
横浜市は、2014年にアースアワーの活動を開始しました。みなとみらい21地区を中心に施設、企業が消灯に参加。2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」の実現に向け、地球温暖化防止と生物多様性保全のメッセージを発信しています。
 

▶横浜市の取り組みについて 詳細はこちら

【第3回】持続可能な成長とゼロカーボンの両立/横浜市
https://econews.jp/report/zerocarbon city/4547
ゼロカーボンシティ自治体の挑戦



また、同地区では2020年に「みなとみらい21地区ソーラーライトチャレンジ」というイベントを実施しました。ソーラーライトは太陽光エネルギーを電気に変換して周囲を照らすアイテム。太陽光だけで充電できるので、電気代が一切かからないのが魅力です。環境に配慮した特製ソーラーライトキットを参加者が組み立て、「エネルギー貧困(Energy Poverty)」の状況にある世界の子供たちに届けました。環境と社会の両面に有益な取り組み事例です。
日本国内ではほかにも、2023年に東京スカイツリー、東京タワー、通天閣、京都タワー、原爆ドームなどで消灯イベントを開催。有名ホテル、大手外食チェーン10社20ブランドでは看板照明の消灯や店内・館内のライトダウンなどを行いました。

 

さらに、アースアワーの取り組みは、気候変動対策や生態系保全などを目標にするSDGsにも貢献しています。

 
【4つの目標】

●目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
●目標13「気候変動に具体的な対策を」
●目標15「陸の豊かさも守ろう」
●目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

 

最近よく目にするSDGsとは?
https://eco-tatsujin.jp/column/vol127_r.html
省エネの達人『企業編』掲載 省エネコラム

 

 

私たちにできること

 

 

2024年は3月23日(土)に開催されるアースアワー。この日の夜は1時間灯を消し、地球のためにできることを家族で考えてみてはいかがでしょうか。部屋の照明を落としてランタンを灯し、テレビを消して皆で綺麗な夜空を眺める…そんな素敵な時間が過ごせるかもしれません。日常生活では、誰もいない部屋は消灯する、エアコンはタイマーを上手に使って必要な場所で必要な時だけ使用する、使わないパソコンの電源をオフにするなど、身近でできる取り組みはたくさんあります。今年のアースアワーの夜に、環境問題への認識をあらためて確認してみませんか?


関連動画

適材適所の明るさを見極めた省エネを行う企業はこちら
【第248回】関東鋼鉄株式会社



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