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限りある水産資源を持続可能に|5月2日は「世界まぐろデー」

皆さん、マグロはお好きですか?

魚や寿司ネタのなかでも人気の高いマグロですが、需要が高いがゆえに乱獲とそれにともなう資源量の減少が問題視されています。世界まぐろデー(5月2日)は、マグロを持続可能な水産資源にすることとその価値を認識し高めていくことを目的として2016年に制定された比較的新しい国際デーです。世界まぐろデーに向けて、限りある水産資源について考え、マグロの食文化とともに、その価値についてもご紹介します。



【目次】
日本のマグロ文化
乱獲による資源量減少
クロマグロの漁獲制限
遊漁者にも規制が
持続可能なマグロ文化を



日本のマグロ文化

世界一のマグロ消費国である日本。ですが、昔は価値の低い魚として扱われていました。赤身で酸化しやすいマグロは、急速冷凍のような現代の保存技術がなかった時代は、食べる頃にはひどく味が落ちてしまっていたことが理由です。江戸後期に入ってからは漬けマグロにすることで広く食べられるようになったものの、現代では高級部位であるトロは捨てられていました。その理由は、脂が多いと漬けにもできず保存に向かず、また脂質の多い食事自体が当時の日本人にはなじみがなかったからだといわれています。トロを好んで食べるようになったのは、欧米の文化が流入し脂質の多い食事になじみが出てきた戦後の話で、ごく最近のことなのです。それから年月を経て鮮度を保つ技術が進歩し、今日のマグロ人気に至ります。

マグロ加工とエコに関する記事はこちら

水産加工業 環境に与える影響が世界一低いマグロ屋を目指す
https://econews.jp/report/corporate_sdgs/10463/
(中小企業のSDGs 2023年12月05日)



乱獲による資源量減少

そんなマグロは日本だけでなく、世界的な魚食文化の広がりにともない、資源量の減少が問題となっています。特に、本マグロと呼ばれるクロマグロは資源量の減少が深刻です。国際自然保護連合 (IUCN)が作成する絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト「レッドリスト」では大西洋クロマグロが絶滅危惧IB類、太平洋クロマグロは絶滅危惧II類と、絶滅危惧種に指定されていた時期もありました。

クロマグロはその食味のよさから人気が高く、価格も他のマグロ類に比べ高値で取り引きされます。そのため乱獲が行われ急激に減少しました。さらに、成魚だけではなく養殖を目的に幼魚の乱獲が行われたことが資源数減少に拍車をかけました。養殖魚は天然魚に比べて運動量が少なく、かつ餌が豊富に与えられるため脂肪を多く蓄えた魚になります。また、魚の養殖方法として養殖で育てた親魚の産んだ卵から育てる完全養殖もありますが、マグロの完全養殖は非常に難しく、高い技術が求められます。そのため天然の幼魚を捕獲して脂の乗ったマグロに育て上げる「畜養」という方法での養殖が一般的だったため、幼魚の乱獲が行われたのです。

国際自然保護連合 (IUCN)に関する記事はこちら

生物多様性とは――生物多様性損失の原因と私たちにできることhttps://econews.jp/column/sustainable/11228/
(サステナブルノート 2024年4月3日)



クロマグロの漁獲制限

乱獲によって資源数が減少したクロマグロには厳しい漁獲制限が設けられました。マグロは国境に関係なく世界中の海を回遊するため、海域ごとの国が集まった国際条約機関が漁獲制限などの規定を設け、資源管理を行っています。現在、国際条約機関は5つあり、それぞれの海域でマグロの漁獲量や捕獲できるマグロのサイズなどを定めています。 日本がマグロ漁を行う海域を管理する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)と大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)では、30kg未満のクロマグロの幼魚の漁獲を規制。漁獲量についても都度会合を開き、その資源の回復量などによって適宜見直しています。

しかし、このような決まりがあってもそれを守らない違法漁業が世界中で横行しています。他にも回遊魚は意図せず網や針にかかって水揚げをしてしまうことがあります。一方で、規定の漁獲量に達している場合は競りにかけることができないためそのまま海に捨ててしまうケースもあり、さまざまな課題が顕在しているのです。

海の生態系についての本を読んでみませんか?

温暖化で日本の海に何が起こるのか ── 水面下で変わりゆく海の生態系
https://econews.jp/column/ecobooks/3185/
(ECO Books 2021年3月2日)



遊漁者にも規制が

クロマグロの規制は漁だけではありません。この連休で釣りをする方もいらっしゃるかもしれませんが、そういった遊漁者にも資源保護のため順守する決まりがあります。

遊漁についての規制
・クロマグロの大型魚(30kg以上)が釣れた場合のキープ(持ち帰り)は1人あたり1日1尾
・多く釣れた場合は直ちにリリース
・小型魚(30kg未満)が釣れた場合も直ちにリリース
・キープした分については、3日以内に水産庁へ報告
狙ったつもりはないけれど釣れてしまった場合も同様です。報告は水産庁のLINE公式アカウントや報告サイトから簡単に行えます。採捕禁止期間もあるので、釣行の際には、事前にしっかりと調べてから臨みましょう。

【参考リンク】
水産庁「クロマグロ遊漁の部屋」



持続可能なマグロ文化を

一時は絶滅危惧種にまで指定されていたクロマグロですが、漁獲制限が奏功し、資源は回復しつつあります。現在は大西洋クロマグロが軽度懸念、太平洋クロマグロは準絶滅危惧へと警戒レベルが引き下げられています。さらに、2024年7月頃に行われる太平洋クロマグロの資源管理についての国際会議(WCPFC北小委員会-IATTC合同作業部会)では、資源回復目標の達成が確認されれば漁獲枠を増枠することも検討されています。このように、ルールを守れば、持続可能な水産資源としてマグロを守ることができるのです。

ここまでマグロの資源を守る取り組みについてお話ししてきましたが、世界まぐろデーは、マグロの価値を認識し高めていく日でもあります。マグロを食すことは私たちの大切な食文化ですから、ルールを守り漁獲されたマグロであれば食べることを控える必要はありません。これからも価値ある水産資源マグロを大切にし、そして厳しいルールを守ってマグロを漁獲・養殖する漁業従事者への感謝を忘れずにいただきましょう。


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