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温暖化で日本の海に何が起こるのか ── 水面下で変わりゆく海の生態系

温暖化がもたらす海中世界の変化

豪雨や夏の猛暑など気候変動のリスクが身近に感じられるようになってきた。そして、地球温暖化による環境変化は地上だけでなく、普段人目に触れない海中にも及んでいる。その事実を潜水取材による豊富な写真を挙げながら紹介する書籍。レポートするのは、海面上昇による南の島国の危機や北極海のシロクマの窮状といった国外の話ではない。日本の海での現在進行中の出来事だ。
著者は新聞記者として約20年科学報道に携わったジャーナリスト。一般読者に伝え続けた文章は平明で、本書の題材も多くはサンマやカキ、マグロやノリなど身近な海洋生物の動向だ。
温暖化が既存の海洋生態系の脅威となる要因は大きく2つあると説く。1つは海面水温の上昇。例えばサンゴは、熱くなった南の海から逃れるように北上しているという。最も速い種類では「1988年には種子島が北限だったが、2008年には約280km北の五島列島・福江島にまで北上した」(86頁)。ほかの魚介類も生息域を移し漁獲量に大きな影響が出ている。もう1つは海洋酸性化。海は大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収するが、CO2は水に溶けると酸として働く。極端に進めば、貝類や甲殻類などの殻や骨格は溶けてしまう。そして人為起源のCO2排出量の増加で酸性化は加速している。
最終章に札幌の店で出される一人前の握り寿司の写真がある。マグロ、ウニ、イクラなど9種。そこから将来なくなる可能性があるネタを除いた同じ寿司桶の写真が横に並ぶ。残ったのはわずか3種類だった。

講談社 1,100 円+税
山本智之 著
1966年東京都生まれ。科学ジャーナリスト。東京学芸大学大学院修士課程修了。朝日新聞記者として約20年間、科学報道に従事。環境省担当、宇宙、ロボット工学、医療などの取材分野を経験。水産庁の漁業調査船「開洋丸」に乗船して南極海で潜水取材を実施、南米ガラパゴス諸島のルポもおこなうなど、「海洋」をテーマに取材を続けている。科学調査への同行を含め、国内外での潜水経験は500回以上。朝日新聞大阪本社科学医療部次長などを経て、2020年から朝日学生新聞社編集委員。海の生物や環境をテーマに講演活動にも取り組む。著書に『海洋大異変ーー日本の魚食文化に迫る危機』(朝日新聞出版)がある。

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