人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、 これから何が起こるのか|エコブックス
湖底の地層から探る太古の気候変動
樹木の年輪のように1年ごとに重なっている「年縞(ねんこう)」と呼ばれる地層。堆積されるには、酸素が供給されない水面下など、いくつもの特異な自然現象が揃わなければならない。「奇跡的」ともいわれる数万年もの時を刻む年縞が福井県にある水月湖で見つかった。現在それは地質学で年代を測定する際の世界標準として、およそ7万年分のいわば「ものさし」や「目盛り」といった役割を果たしている。
本書は水月湖の年縞を詳細に分析し、世界の研究者に「レイク・スイゲツ」として知られるようになる研究過程を紹介する。地質や気候、堆積物に含まれる花粉の分析など関連する知識のわかりやすい解説を交えながら、不屈の精神で研究を遂げたドラマチックな逸話も織り交ぜる。
だが「年代の目盛りを作ることは、私たちにとって目標の半分でしかなかった」(8頁)。目指すのは目盛りを使い、過去の気候変動の様子を明らかにすることだ。1万年以上前の氷期、気温の変動幅がわずか数年ほどで10℃近くにも達していたことを導く。その結果から推察し、当時の人類は気候変動にも適応性が高い狩猟採集の暮らしを継続したと考える。農耕生活に移るのはその後の気候が安定してからだと考察する……。
過去、人類が直面した障壁の情報は、将来訪れる危機への有用な知見になる。
講談社 920円+税
中川 毅 著
1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1998年、エクス・マルセイユ第三大学(フランス)博士課程修了。Docteuren Sciences(理学博士)。国際日本文化研究センター助手、ニューカッスル大学(英国)教授などを経て、現在は立命館大学古気候学研究センター長。専攻は古気候学、地質年代学。趣味はオリジナル実験機器の発明。主に年縞堆積物の花粉分析を通して、過去の気候変動の「タイミング」と「スピード」を解明することをめざしている。
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