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樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声

森の樹木は社会を持ち子育てもする

 樹齢10年ほどだと思っていた人の背丈ほどのブナの木を、よく調べてみると「80歳」は超えていた。著者は彼らを〝若造たち〞と呼び、およそ200歳の母親の下に立つ子どもと説明する。1年で50cm育つブナだが、母親の教育方針で生長が妨げられているようだ。母親は周囲の成木とともに枝を広げ下に日光が届かないようにする。若木の葉に洩れる光はわずか3%だ。
植物は光合成で自ら栄養をつくり出す。光が多ければ生長も早く、少なければ遅い。だが、ゆっくりした生長は内部の細胞を細かくし、幹をしなやかにし、菌類などに対する抵抗力も強くする。時間をかけての生長は、寿命を長くするための条件だった。母親はそれを知っていて、最低限の光しか与えない。そして、月日がたち自らが朽ち倒れたとき、森の屋根に開いた穴からたくさんの日の光が子どもたちに注ぐ。
教育だけではない。森の木々は地中に張った根のネットワークを通じて傷ついた仲間に糖液を分け合うなど助け合いのコミュニティ社会を形成することもわかってきた。
著者はドイツの森林管理官。森を見つめ、声を聴くうち、100年前後で伐採と植林を繰り返す林業のやり方に疑問を抱く。人の手が入らない原生林で樹木たちの社会を蘇らせることが必要なのではないか。読後、森だけでなく街路樹にも、親しみの言葉をかけたくなる。

早川書房 1600円+税
ペーター・ヴォールレーベン 著/長谷川圭 訳
1964年、ドイツのボンに生まれる。
子供のころから自然に興味を持ち、大学で林業を専攻する。卒業後、20年以上ラインラント=プファルツ州営林署で働いたのち、フリーランスで森林管理を始める。2015年に出版した本書はドイツで70万部を越えるベストセラーを記録。34カ国に翻訳された。

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