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歩く、見る、聞く 人びとの自然再生

守るのは、人々と自然がつくる物語

 自然保護、地球温暖化対策、生物多様性保全……。そうした大きな枠組みの中で、国際機関や政府などが行う取り組みは、人間が暮らしやすい環境を永続的に維持していくための正しい活動になっているはずだ。だが時として、その政策が、自然と調和しながら豊かに暮らす人々の生活を抑圧する存在になる。本書であげている「自然保護難民」はその顕著な例だ。自然保護区の指定が増え、土地を離れざるを得なくなった人が世界中で数百万人もいると紹介している。
では、何を基準に自然環境の保全を進めるべきか。本書が示すのは、単に外側から眺めた自然ではなく、人間との多面的な関係からなる自然を考慮すること。それは「物語」ともいえる。岩のり採集で生活を支えてきた宮城県石巻市の集落、ヤシの木が枯れると幹を倒して放置し、幹が腐る過程で自然発生する通称・サゴ虫を集め食用にするソロモン諸島の人々、北上川の河口部に広がる葦(あし)を利用するための集落同士の自主的な取り決めなど、著者が見聞きしてきたという人々と自然がつくる「物語」だ。
「この本がたどり着いた結論は、小さな物語を大事にするということだった。人びとが語る自然、人びとが話す生活、そうしたものの中に自然再生の形がある」(199頁)。

岩波新書 780円+税
宮内泰介 著
1961年生まれ。
北海道大学大学院文学研究科教授。環境社会学。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。自然と人、コミュニティのこれからをテーマに、国内外のフィールドワークを続ける。さまざまな市民活動、まちづくり活動にもかかわっている。

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