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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

相互協力で乗り越えた全域停電 Scene 38

北海道函館市より15kmほど北上した亀田郡の山川牧場。道南で初めて商品化した高品質のジャージー牛乳をはじめヨーグルトやチーズなど安心・安全にこだわる乳製品を製造・販売している。

小さな取り組み、復電後の今も

 2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生した。この地区は震度3ほどの揺れだったが、停電は道内全域に及んだ。代表取締役の山川明さんは「私たち酪農家は災害時に非常用発電機が借りられる契約を結んでいます。でもそれは事前対策できる台風などに対応するもの。今回のような突然の事態には対応できませんでした」と話す。一般的に搾乳期を迎えた乳牛は1日に2度乳を搾らなくてはならない。12時間以上空くと乳房炎を発症し、牛乳の品質にも影響が出てしまう。

搾乳期を迎えた乳牛は1日に2度乳を搾る必要がある

代表取締役の山川明さん

 山川さんは地区の酪農組合長でもある。農協や建築業者などに問い合わせ非常用発電機をかき集めた。「牛を守るため一刻も早い復電を願うばかり。結果的に1〜2日間の停電でしたが、その間はやっと集めた13台の発電機を20軒ほどの酪農家で順番に使用しました」。
 搾乳や冷蔵は可能になったが、乳業メーカーは事業を一時停止。苦労の末に搾った牛乳も廃棄せざるを得なかった。それでも地元乳業メーカーの対応は早く、地震発生3日後に牛乳の受け入れ態勢を整えてくれた。「多くの方の協力で被害は最小限に抑えられました。その後の節電要請では無駄な電気を消すなど小さなことにも懸命に取り組みました。要請が解除された今もその取り組みは続けています。今回の経験で心から電気のありがたみを感じましたね」。

 その後、山川さんは今後の災害に備え自前の発電機を購入した。費用はかさんだが、万一の場合にも商品の品質を維持したいという強い気持ちと牛たちへの深い愛情を考えれば、決して高い買い物ではなかった。

こぼれ話

牛は見知らぬ人に対しては大人しいですが、見慣れた人へは凶暴になることもあるそうです。実際に山川さんは足を踏まれ、何度もケガをしたことがあるといいます。「牛は足で踏むだけでなく、踏んだ後にひねるのが特徴。ケガが長引きます(笑)」。そう笑って話す山川さんですが、牛舎では一頭ずつ頭を撫で、それを心地よさそうにしている牛の姿が印象的でした。
ソフトクリームとコーヒー牛乳をいただきました。味が濃くてとてもおいしかったですよ♪

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