第1回 平均気温の上昇とともに極端な高温の頻度も増加している

地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。

本書の ”2.平均気温の上昇と共に極端な高温の頻度も増加している” は以下の書き出しから始まります(以下、””部分はすべて日本の気候変動2020からの引用です)。

●世界と日本の年平均気温は、様々な時間スケールの変動を伴いながら上昇している。
●気温の上昇は一様ではなく、日本の年平均気温の上昇は世界平均よりも速く進んでいる。
●日本国内では、真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数が有意に増加している一方、冬日の日数は有意に減少している。
本書 6P

実にショッキングな内容ですね。

ここで用語について解説しておきます。
「有意に」とは統計上、単なる偶然ではなく何らかの因果関係の結果、必然的に起きている事象を指します。つまり、日本で暖かい日が増えているのは決して偶然ではありません。その因果関係については次のように解説されています。

大気中の温室効果ガスは、地表面から上向きに放出される赤外線(長波放射)を吸収し、地表面に向かって再放出する働き(温室効果)がある。18世紀中頃の工業化以降、人間活動に伴い大気中の温室効果ガス濃度は増加し続けているため地球上のほぼ全域で気温と海水温が上昇している。この現象が地球温暖化である。
本書 5P

人間が生産活動で生み出した温室効果ガスが、地球温暖化を促しています。

では、温室効果ガスによりどの程度日本は温暖化しているのでしょう。地域の詳細データを見てみましょう。

都市化の影響が比較的小さいとみられる気象庁の15観測地点(本文内注:網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、多度津、宮崎、名瀬、石垣島)で観測された平均気温は、様々な時間スケールの変動を伴いながら、1898年から2019年の間に100年当たり1.24℃の割合で上昇している。2019年の年平均気温は統計開始以降で最も高かった。
本書 6P

気温は高い時もあれば低い時もあります。そのため、たとえば5年くらいの単位で平均を取った場合、下がっているケースもあります。「様々な時間スケールの変動」とは、見る時間の単位によって上下を繰り返しながら、という意味なのです。そして本書は100年単位で気温を比べたとき、1.24℃の上昇がみられたと書かれています。ちなみに本書によれば ”2015年から2019年で平均した世界平均気温は、工業化以前の水準(1850~1900年の平均)に比べ約1.1℃高かった” とあります。つまり、日本の年平均気温は世界平均よりも速く上昇しているのです。

さらに、 ”真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数が有意に増加している一方、冬日の日数は有意に減少している” ことも、分析結果から読み取れます。

1910年から2019年の間に、日最高気温が30℃以上の日(真夏日)、35℃以上の日(猛暑日)及び日最低気温が25℃以上(熱帯夜)の日数は、いずれも増加している(信頼水準99%以上で統計的に有意)。特に猛暑日の日数は1990年代半ばを境に大きく増加している。一方、同期間における日最低気温が0℃未満(冬日)の日数は減少している(信頼水準99%以上で統計的に有意)。
本書 7P

(出典:本書 7Pより)

本書のグラフによれば、真夏日は1910年が約27日なのに対し2020年は約42日、猛暑日も1910年が約0.1日なのに対し2020年は約3.6日となっており、平均すると一貫して日数が増えています。これに対し冬日は1910年が約70日なのに対し2020年は約50日となっています。

なお、気象庁はより正確な気温の傾向を掴むために、あえて都市化の影響の比較的少ない15都市のデータを選んでいますが、それにもかかわらず気温の上昇が見られたということは、都市部では一層の温暖化が進んでいるのではないかという予測が成り立ちます。近年はヒートアイランド現象という言葉が知られるようになりましたが、一般にコンクリートやアスファルトが増え、緑化率が下がると、気温は上昇するため、都市化と気温上昇は密接に関係していると言われています。

真相は果たしてどうでしょうか。

次回は都市部の温暖化現象について見ていきます。

関連リンク:
気象庁『日本の気候変動2020』https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/

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