• 「日本の気候変動2020」を読み解く
  • 気象庁では『日本の気候変動』を毎年発行しています。地球の温暖化について最新の知見が盛り込まれた本書について解説していきます。

第8回 日本近海の平均海面水温は、世界平均の2倍を超える割合で上昇している

「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を毎年発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。

産業革命以降、地球の温暖化が進んでいることについて、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は第6次報告書で「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_HS_JP_20210820.pdf)」とはっきり断定しています。そして、日本近海の平均海面水温は、世界平均の2倍を超える割合で上昇していることが調査の結果わかったそうです。まずは世界の海面水温の変化から見ていきましょう(以下“”部分は基本的に『日本の気候変動2020年版』からの引用です)。

●2019年の世界全体の年平均海面水温平年差(1981~2010年の平均値からの差)は+0.33℃で、1891年以降では2016年と並んで最も高い値となった。世界全体の年平均海面水温は長期的に上昇しており、1891年から2019年の期間における上昇率は100年当たり+0.55℃である。
●温室効果ガスの増加により地球に新たに加わった熱エネルギーの90%以上が海洋に蓄えられており、その結果、水温の上昇は海面のみならず海洋内部にも及んでいる。水深2,000mまでの平均水温は、1955年から2019年の間に約0.15℃上昇しており、更にこの昇温は1990 年代半ばから加速している。海洋内部の昇温は、海水の熱膨張を通じて世界平均海面水位の上昇にも寄与している。
本書26P

温室効果ガスによって海面へ新たな熱エネルギーがくわわった結果、海面だけでなく海洋内部の水温も上昇しています。
そして日本近海では場所によって違いはあるものの、世界平均の2倍超の割合で水温が上昇しています。

●日本近海における2019年までのおよそ100年間にわたる上昇率は、+1.14℃/100年となっており(信頼水準99%で統計的に有意)、世界平均の上昇率(+0.55℃/100年)よりも大きく、日本の気温の上昇率(+ 1.24℃/100年)と同程度の値となっている。(詳細版第9.1.2項)
本書26P

ちなみに、海水温だけでなく気温も世界平均と比べて日本の上昇率の方が高くなっています。その理由については本書の6Pに記述があります。

●雪氷アルベドフィードバック※や海陸の昇温量の違い(水分の蒸発により熱が奪われやすい海洋の方が陸よりも温度が上がりにくい)等により、陸域が多い北半球の中高緯度は地球温暖化による気温の上昇率が比較的大きい。
●これを反映して、日本の平均気温の上昇率は世界平均よりも大きい。
※アルベドとは太陽光の反射率のこと。アルベドが高いほど太陽光を反射するため、地表面が暖まりにくい。雪や氷が融け地面や海面が露出すると、それまで反射されていた太陽光が吸収されて温度が上がり、その結果更に多くの雪氷が融解し、温度が上がる(逆もまた然り)。この正のフィードバックを雪氷アルベドフィードバックと呼ぶ。
本書6P

北半球の中高緯度に位置する日本の気温の上昇率が世界平均より高いのは、雪や氷が融け、これまで反射していた太陽光が反射されなくなったからといった理由が考えられるようです。
これに対し、日本近海の海水温が世界平均より上昇しているのは以下の理由が考えられます。以下、日本の気候変動2020(詳細版)から引用します。

日本付近の海面水温上昇率が世界平均の上昇率よりも大きい要因としては、上記の海洋循環の変化(日本付近においては暖流である黒潮の変化)の影響に加え、大陸に近い海域の海面水温の上昇率が相対的に大きくなっていることから、日本に近い大陸内陸部での大きな気温の上昇率の影響を受けている可能性も考えられる(気象庁, 2015)。また、大気海洋結合モデルを用いた最近の研究によると、1980 年代以降の黒潮域の昇温の要因として、対流圏下層において北西太平洋域に運ばれた暖気の移流と黒潮の北偏を伴う海洋循環の変化の双方が寄与した可能性が指摘されている(Toda and Watanabe, 2020)。
日本の気候変動2020(詳細版)146P

日本近海の海水温の上昇については、大陸に近い海域の海面水温の影響および暖流(黒潮)の変化と関連がありそうです。そして、日本近海でも温度の上昇率は場所によって異なりますが、一般に冬の昇温率が大きいとのことです。
それにしても世界平均の2倍以上高いという事実には驚きです。
次回は、今後の海水温変化の予想を見ていきます。

海水温上昇豆知識
昨今は南方の魚が徐々に北方の海域に進出しているといわれています。
熱帯魚などは昔から、黒潮に乗って日本近海にたどり着いたものの、冬が近づき、海水温が下がってくると、適応できずに死んでいました。これらは「死滅回遊魚」と呼ばれ、時々海岸に打ち上げられるなどして、一般にも存在が知られていました。しかし近年はその「死滅回遊魚」が冬の伊豆地方の海岸で生存していることが、ダイビング会社の調査などからわかっています。
死滅回遊魚は昨今の温暖化を象徴する事例と言えますが、一方で温暖化が日常生活に大きな影響を与えている例もあります。たとえば北海道では鮭の漁獲が年々減少する一方、これまで獲れなかったブリなどの水揚げが増えている、といったニュース(http://eco-tatsujin.jp/column/vol187_r.html)が話題になっています。2021年現在、鮭やイクラなどの値段は徐々に上がっており、漁業関係者や飲食業者が頭を悩ませるなか、無論消費者である私たちにも品薄・値上がりといった影響が出ています。

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