• 「日本の気候変動2020」を読み解く
  • 気象庁では『日本の気候変動』を毎年発行しています。地球の温暖化について最新の知見が盛り込まれた本書について解説していきます。

第10回 
日本沿岸の平均海面水位は、1980年以降、上昇傾向にある 
今後、日本沿岸の平均海面水位は上昇すると予測される

最終更新日 2022.3.9

「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。

気温・海水温が上昇すると、氷床や氷河の融解が進むほか、海水そのものが膨張するため、海面水位が上昇します。その海面水位はどのように推移してきたのでしょうか。具体的な数字をみていきましょう(以下“”部分は『日本の気候変動2020年版』からの引用です)。

世界平均海面水位は過去100年間で約15cm上昇している
●IPCC海洋・雪氷圏特別報告書によると、1902年から2010年の期間に世界平均海面水位は0.16m(0.12~0.21m)上昇した。2006年から2015年までの期間の上昇率は、1年当たり3.6mm(3.1~4.1mm)であり、1901年から1990年の上昇率の2.5倍である。水位の上昇率は最近の数十年で大きくなっている。(括弧内の範囲は95%信頼区間。)
●世界平均海面水位の上昇は、氷床や氷河の融解、及び水温上昇に伴う海水の膨張が原因と考えられる。
●海面水位の変化は地域によって異なる。地域的な違いは、世界平均海面水位の上昇の±30%以内であり、陸域の氷の減少に伴う地殻変動や海水の熱膨張、海洋循環の変化の地域的偏りによって生じている。
本書29P

世界の海水面は100年で約15cm上昇し、しかも近年は上昇率が2.5倍に上がっています。
一方、日本に目を転じてみると、世界平均と同様の期間を通じた上昇現象はみられないものの、1980年以降は上昇傾向が明確になっています。

●日本沿岸の平均海面水位(4地点又は16地点の平均)には、10年から20年の周期を持つ変動と50年を超えるような長周期の変動が卓越しており、世界平均海面水位に見られるような観測期間を通して一貫した上昇傾向は認められない。
●1980年以降は上昇傾向が明瞭となっており、2006年から2015年の期間では1年当たり4.1mm(0.1~8.2 mm)の上昇率となっている。これは、世界平均海面水位の上昇率と同程度である。
●観測点の多い1960年から2019年までの海面水位の変化には、北陸地方から九州地方の東シナ海側沿岸で他の地域に比べて大きな上昇傾向が見られる。
●日本沿岸の平均海面水位に見られる長周期変動の要因は、気候システムに内在する自然変動が中心と考えられている。一方、加速傾向にある世界平均海面水位の上昇に関しては、人間活動の寄与が相対的に大きくなっていると考えられている。現在のところ、日本沿岸の平均水位上昇について、両者の寄与の定量的な把握には至っていない。
本書29P

引用の最後の文章“現在のところ、日本沿岸の平均水位上昇について、両者の寄与の定量的な把握には至っていない。”とは、「気候システムに内在する自然変動」と「人間活動の寄与」がどのくらいの割合で影響を及ぼしているのかはわからないということを意味します。もっとも、“2006年から2015年の期間では1年当たり4.1mm(0.1~8.2mm)の上昇率”となっていることから、日本近海の海水面もまた上昇していることがわかります。

そしてこの傾向は今後も続くと予想されます。

●21世紀末の日本沿岸の平均海面水位は上昇する(確信度が高い)。この海面水位上昇量は、世界平均と同程度である。
(中略)
4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では、21世紀末の世界平均の海面水位は約70㎝上昇すると予測されている。
●IPCC海洋・雪氷圏特別報告書によると、21世紀末(2081~2100年平均)における世界平均海面水位は、20世紀末(1986~2005年平均)に比べ、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では0.71m(0.51~0.92m)、2℃上昇シナリオ(RCP2.6)では0.3(0.26~0.53m)上昇する。
本書30P

IPCCの4℃上昇シナリオ(RCP8.5)に沿って温暖化が進展した場合、このまま21世紀末までに海水面が0.51~0.92m上昇することを意味しています。こうした海水面の上昇が日本人の暮らしにどのような変化をもたらすのか、コラムにまとめました。

コラム 海水面上昇と災害時の被害について
日本は台風の多い土地柄です。海面上昇は高潮を招き、台風発生時の被害拡大につながる恐れがあります。地球温暖化が進み、海水面上昇がどのように被害を拡大する可能性があるかについては、既に早い時期から研究が行われてきました。

たとえば国土交通省が2007年に行った第7回大規模水害対策に関する専門調査会「地球温暖化に伴う気候変動について」によれば、平均海水面が59cm上昇した場合、東京湾・伊勢湾・大阪湾の日本三大湾で、現在のゼロメートル地帯の面積・人口がおよそ5割増えると考えられています。ちなみに、この場合の海面上昇量59㎝は、SRESシナリオ(IPCCが2000年に発表した温暖化ガス排出シナリオ)より予測される世界平均海面水位の上昇量の上限でした。現在IPCCが発表しているシナリオはRCPです。4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では0.51~0.92m海面が上昇すると予想されています。
最高で92cmという予想は、2000年当時より温暖化が進むケースが想定できるようになったためです。今後、地球温暖化が一層進んだ場合、万一大型の台風が発生するとより多くの被害が出ることになります。

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