環境教育の視点で見るSMART CLOCKの有用性

 2023 年初号(環境市場新聞第71号)の新春対談で登場するのは、環境教育の研究素材としてSMART CLOCK(スマートクロック)に着目した福岡女子大学准教授の岩﨑慎平さん。提供元である日本テクノの馬本英一社長に商品開発の経緯を聞きながら、その有用性について語り合った。

提供したかったのは自然な行動を促す商品

 馬本 当社のSMART CLOCKを研究の対象にしてくださったとのこと、ありがとうございました。大変光栄に思います。
 岩崎 こちらこそ、いろいろご協力いただき、おかげさまで充実した研究成果が得られ、それをまとめた冊子も発表できました。
 馬本 『スマートクロックを用いた幼児期からの環境教育実践〜エコビジュアリゼーションの活用〜』ですね。幼稚園など当社のお客様の活動も含め客観的にまとめられていて、商品の提供元ながら新鮮な刺激を受けています。こういった分野の研究は、どんな経緯で始められたのですか。
  岩崎 子どもの頃から山登りなどを通して自然に親しむのが好きでした。するとその豊かさに触れると同時に、失われていく姿も目に入る。持続可能ではなくなっていく様子です。やがてそれを解決するにはどうすればいいか考え始め、環境分野の研究をするようになりました。だから座学というよりも現場で何が起きているか課題を探り、それに対する問題解決を図るのが原点です。
 馬本  私も同様の思いがあります。子ども時代の日本は高度経済成長期で、公害問題が深刻化しヘドロの川を見ながら育ちました。この状況は変えるべきだと常々思っていましたが、当時の心ある人たちによって改善されていき、今では東京の川も驚くほどきれいになった。私もそうした環境保全への貢献が少しでもできればと思っています。SMART CLOCKを含めた省エネの推進にも少なからずその気持ちがあります。ところで岩﨑先生は、この商品の存在をどうやって知ったのですか。
 岩崎 研究活動の中で環境教育のよい事例を探していて日本テクノさんが提供する「省エネの達人『企業編』」の動画を見つけました。愛媛県の「木の実幼稚園」の事例で、園児たちがSMART CLOCKを使って楽しく省エネしている姿がとても印象的でした。こんな取り組みは世界的にも珍しく、ぜひ研究させてほしいと声をかけさせてもらったのです。

 馬本 時計が赤色の警告表示になったりしたとき、気づいた園児が自ら館内放送で注意を呼びかける取り組みですね。確かにあれは楽しそう。この会社を立ち上げた最初の頃は、使い過ぎたら自動的に電源を落とすようなデマンドコントローラーでの節電を考えていました。でもそうではなく、人による毎日の自然な行動で省エネに取り組んでもらいたいと発想を変えたのです。英語にしてデイリー・ナチュラリー・アクション。その頭文字は、変電設備につける主装置の名称(ESシステムDNA・2002年)に取り入れたこともあります。園児の活動は私たちの願い通り、まさに自然な行動ですね。
 岩﨑 日常の行動の中でわかりやすく、電気の使い方の情報を読み取れる。その機会ができていることが一番の強みだと感じました。誰もが1日に何度も目にとめる掛け時計を使っているところが実によくできているというか。
 馬本 当初から時計だったわけではないのです。あれこれ悩んだ試行錯誤の結果でした。使用状況がグラフや数値で表示できるSMARTMETER ERIA(環境指向型多機能モニター)がまずあり、そのオプションとしてもっとわかりやすく自然な行動を促せるものを提供したかった。そこで大型パネルで表示させたり、LEDバーをポール状にしてみたりと試作を重ねたのですがどれもお客様に満足してもらえるような出来にはならず、くじけそうになっていました。そんなとき、ふと見た腕時計で「これだ」とひらめいたのです。LEDを丸く配置して1分1つの60本のランプを電気の使用状況に応じて色を変えながら表示すればいいと。
 岩﨑 行動のきっかけになる最適なツールだと思います。私が共感しているアメリカの行動科学者BJ・フォッグさんは、人が行動するときの条件を3つ挙げています。「モチベーション」「能力」「プロンプト」です。3つ目のプロンプトを言い換えると「きっかけ」。それが最も大事な要素といえます。資源の無駄遣いをやめようというモチベーションがあり、省エネでスイッチを切る能力もあるけれど、きっかけがないと実際には動き出さない。「赤色=使い過ぎ」という情報はひと目で気づきを得られ、それを契機に行動に移せる。これはコミュニケーションを育む教育の視点からも、よいきっかけになります。
 馬本 環境教育だけではないということですか。
 岩﨑 はい。先生に「赤色になっているよ」と報告するのも、園児同士で「じゃあ電気を消してみよう」など相談するのも自然にできる。「見える化」「理解(わか)る化」により気づいたことを考え、話し合う機会がつくられます。いうなれば「つなぐ化」。一歩踏み込んだコミュニケーションが期待できます。ただ、このように素晴らしい商品なのですが課題は1つ残っていると感じます。続けていると飽きてしまう。あえて要望を言わせてもらえるなら、ずっと飽きずに楽しんで取り組める仕掛けをつけてもらえたらうれしいですね。

よいものを社会に伝える研究者でいたい

 馬本 一般ユーザー向けには継続的な取り組みを進めてもらうため半年に1度、省エネ活動の助言をするアシストサービスを提供しています。サービス導入後1年は効果が出ても2年目以降は伸び悩むケースが多い。だから売りっぱなしにはせず、商品だけではカバーしきれない部分を人の手で補っています。元々ビジネス向けにつくった商品をお客様の発想で環境教育にも活用いただいている。ユーザーの目線に立った商品開発を念頭に置き、今後の課題として検討させてください。
 岩﨑 ありがとうございます。いい商品と思うからこそ、そんな要望が出てしまいました。私は研究者として、よりよい社会になるための橋渡しの存在になりたいと思っています。いいものはいいと世の中に伝えていく研究を続けたい。SMART CLOCKは伝え広げたいものの1つなのです。
 馬本 私も、まだ夢を語るような段階ですがグローバル展開も含め商品を広めていく努力を続けていきます。本日はどうもありがとうございました。
 岩﨑 こちらこそ、どうもありがとうございました。


日本テクノは2022年12月7日(水)から9日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2022」(主催:日本経済新聞社など)に出展いたしました。
さらに8日(木)、9日(金)の2日間は福岡女子大学准教授の岩﨑慎平先生による特別講演が行われました。講演のテーマは「スマートクロックを用いた幼児期からの環境教育実践~エコビジュアリゼーションの活用~」。幼児期から環境教育に触れることの重要性について、SMART CLOCKの機能も絡めながらお話しいただきました。



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