• 日本の環境教育
  • 全国各地の環境教育授業の様子をレポート。地域の特色を活かし地元住民と協力しながら進める授業や、企業が出張して行う出前授業などユニークな取り組みを紹介

長野市立共和小学校「育て!りんごと郷土愛」

1874年の創立から約1世紀半もの歴史を持つ「長野市立共和小学校」。2006年に通学区の再編に伴い現在の場所に移転新設された。長野県の特産物であるりんごの畑に囲まれ、子どもたちはのびのびと学校生活を送っている。この地区では以前から地域交流が盛んで、地元のネットワークを生かした学校教育に力を入れている。
長野市立共和小学校

上級生と下級生が組む「きょうだい学級」が後押し

優しさを育む学級制度

ここでは1年生と6年生、2年生と5年生、3年生と4年生がペアになって行動する「きょうだい学級」や「たてわり班」という制度を設けている。この制度を日々の活動に織り込むことで、弱者を守り、互いに思いやる優しさを育んでいる。
そうした活動の中で、約50年継続しているのがりんご作り体験である。学校前には「りんちゃん畑」と名づけたりんご園があり、「王林」や「陽光」など、約20本の木が植えられている。中心となって世話するのは「りんご委員会」。水やりや草取りをはじめ、りんごを大切にする気持ちを全校に広める活動を行っている。
まず春に行われるのが、全学年参加の花摘みだ。りんご栽培に特化した共和園芸農業協同組合の協力のもと、りんちゃん畑だけでなく地元農家のりんご畑で行う。春になると、りんごの木には白い花が満開になるが、すべてを結実させると栄養が分散されてしまうため、中心を残し周りの花を摘み取る作業が必要になる。それを子どもたちが手伝う。毎年の恒例行事なので2年生以上は慣れた手つきで「花粉天国だ」「休憩時間が惜しい」と袋いっぱいになるまで夢中になり作業に励む。初めて花摘みを体験する1年生も、6年生に優しく教えてもらいすぐにコツをつかむ。

毎年、りんごの花が満開になる時期には、花摘み作業を体験する 毎年、りんごの花が満開になる時期には、花摘み作業を体験する
毎年、りんごの花が満開になる時期には、花摘み作業を体験する
毎年、りんごの花が満開になる時期には、花摘み作業を体験する


秋は、りんごへのシール貼り。まだ熟していない緑色のりんごの側面に、好きな絵や文字を切り抜いたシールを貼る。りんごは紫外線を浴びることで赤みが増すが、シールの部分は日が当たらないため、収穫時にはそれぞれの印が白く浮きあがる。こうしてさらに愛着が増したオリジナルのりんごは、収穫後に子どもたちに届けられる。届いたりんごは各家庭に持ち帰るほかジャム作りに使用するクラスもある。ジャムを作ったクラスは、ほかのクラスへのお裾分けも。子ども同士の結びつきはここでも深まっているのだ。

心に根づく故郷の姿

当然、「りんちゃん畑」は利益を目的としたものではない。それは地域の方々のサポートも要する手間の掛かる畑かもしれない。花摘みやシール貼りにしても、地元の協力がなくては成立しない取り組みだろう。そうした多くの協力が得られるのは、子どもたちが故郷を愛し、優しく素直に育ってほしいという願いがあるからだ。同校の教頭・前田利彦さんは言う。「今後も地域が大切にするりんご作りに携わり、地元の方々に支えられながらよりよい教育を行っていきたい」。
おそらく、りんご作りを支援する地域の方々も、今と変わらぬりんご畑の風景に囲まれて育ったことだろう。その環境の中で大人になった人たちが、今の子どもたちを、温かい目で見守っている。
りんご畑の風景

こぼれ話

長野市立共和小学校ならではの活動を行う「りんご委員会」。児童委員会活動計画案によると、目標は「共和のりんごを食べてえがおになってもらう」こと。子どもたちから故郷への愛を感じます。さらに1月はりんごクイズ週間が設けられ、委員会メンバーは本やインターネットでりんごについて調べ、お昼の時間に放送でクイズを流しているそうです。県別の収穫量ランキングのほか、教職員もうなるようなクイズも出されるとか。こうした働きかけが、全校でりんごへの関心を高めるきっかけとなっていました。

長野市立共和小学校

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