電気をためる蓄電池 非常時の備えにも

 電気はその性質上ためることが難しく、電力会社は常に需要に合わせ発電量を調整する「同時同量」の供給を行っている。ただし「蓄電池」を使えば電気はためられる。現状ではまだ大規模な送電網に適するものは普及していないが、将来的には技術やコスト面での壁を乗り越え、広まっていくだろう。今回はその蓄電池について解説する。
 蓄電池にはさまざまな種類がある。約160年前に発明された鉛蓄電池は、安価で比較的長期間使用できるのが特徴。今でも自動車のバッテリーなどで利用されている。約120年前にスウェーデンのユングナーが発明したのはニッケル・カドミウム蓄電池。ニカド電池とも呼ばれ、安定した電力を連続で放電できる。玩具、家電製品などで広く使われていたが、カドミウムの有害性などから近年は使用が減っている。
 その後開発されたのがカドミウムを使わないニッケル・水素電池。ニカド電池と比べ充電・放電速度および充電可能な電力量が向上しており、現在ハイブリッドカーのバッテリーや鉄道の地上蓄電設備などで広く利用されている。だが、電力が残っている状態で充電を繰り返すと充電容量が減少する「メモリー効果」が生じるという難点もある。
 それを解決したのがメモリー効果が起きにくいリチウムイオン電池だ。ノートパソコンや携帯電話などモバイル機器に多用され、現代の日常生活で最も活躍している。しかし、他の蓄電池に比べ価格は高い。
 産業用大型蓄電池としてはナトリウム・硫黄電池がある。日本企業が世界で初めて実用化に成功したメガワット級の蓄電池は電力を長時間供給できる。
 多種多様な蓄電池。東日本大震災をきっかけに、災害時の非常用電源として導入するケースも増えてきた。それを太陽光発電システムと連携し、昼間にためた電気を、日照のない夜間や天気が悪い日などに消費するといった効率的なシステムも構築できる。またポータブル蓄電池なども登場し、キャンプなどアウトドアでの使用場面も増えている。
 蓄電池は再エネ出力変動の平準化や走行時の排ガスがない電気自動車の普及に欠かせない。今後の発展に大きな期待が寄せられる。

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