地上(電柱)か、地中か 電線の敷設場所
街の景色の一部になっている電柱。実はこういった風景は日本ならではで、他の先進国では電線を地中に埋め、地上に架設しない方法が主流になっている。
日本でも、地中化するなどで道路から電柱をなくす「無電柱化」を目指す動きはある。だが、最も無電柱化率が高い東京都でも、無電柱化されている道路はわずか8%弱だ(2017年度末国土交通省調査)。
電柱および電線は、戦後の迅速な復興のため、日本各地で張り巡らされてきた。その結果、現代の日本では林立する電柱が歩行者や車いす利用者の通行を妨げ、安全・円滑な交通の確保を困難にし、良好な都市景観を損ねることになっている。また、近年の地震や台風といった災害時には、電柱倒壊による道路の通行止めにより、避難や救急活動に支障が生じ、大きな問題となった。このような二次災害を防ぐため、無電柱化による防災機能の強化が求められている。
それでも、いまだに無電柱化が実現しない最も大きな理由はコスト面にある。地中化の場合、地上電柱の3〜10倍、1km当たり1億〜5億円ほどの費用が必要だ。また、地中に電線を埋めるには、さまざまな関係者(道路管理者である行政、電柱を利用する電力会社や通信会社、ケーブルテレビ会社など)の同意が必要になり、道路の通行規制や既存の埋設物(上下水道やガスなど)などの問題から、工事期間も長くなりがちである。
さらに、電柱倒壊などの二次災害を防ぐ目的で地中化した場合でも、災害時に被害がゼロになるわけではない。地中化した電線に断線が発生した場合、復旧するには路面を掘り返して作業を行う必要があり、この場合はむしろ復旧に時間がかかる。また、地盤の液状化が起こりやすい場所では、電柱が地上にあることで被害が抑えられるケースもある。
一口に「無電柱化」といっても、地中化にはさまざまな問題がある。特に災害対策として考えた場合には場所に応じて可否を検討する必要があるだろう。
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