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  • 企業活性化教育研究所の長尾光雄所長が、企業研修時に経験した「自利利他」にまつわるエピソードを紹介。環境市場新聞創刊時から連載する人気コラム

マンネリな仕事をするな!!プロは常に現状に満足しない

芝蘭之化(しらんのか)-5-

 マンネリは人間の脳にとって必要だ。脳が膨大な情報を処理するには一度経験した事象をマンネリ(慣れ)にしてコントロールしなければならないからだ。ここで問題なのは、プロとして携わるべき仕事までマンネリで処理してしまうことだ。
 自動車メーカーのトヨタには、仕事の標準仕様書があるという。そこに書かれた通りに動けば誰でも最高の仕事ができる手引き。だがその仕様書は日々変わっていく。もし以前の仕様で働いていると、上司から「この仕様書は3日前の改善改革だ。それ以降何も考えずに仕様書通りの仕事をしていたのか?マンネリな仕事をするな!!」と叱責されるそうだ。毎日0.1%のわずかな改善でも、それを続けると、複利計算で積み重なるため1年間で44%になる。もし5年間継続すれば6倍の成長になるのだ。
 オリンピックのマラソン競技に3大会連続で出場した東海大学名誉教授の宇佐美彰朗氏は現役当時「走るだけのマラソンに飽きないか」と質問され「何回走っても同じことをしている感覚はない。コースや天候など条件も違う。走る度に新鮮な気持ちだ」と答えたとのことだ。宇佐美氏にあったのはどうすればベストの走りができるかだ。
 プロは常に改善、改革し、課題を持って仕事に取り組み、少しでも成長しようと実行する人だ。企業人は誰もが各職種におけるその道のプロだ。わずかな改善でも毎日の積み重ねを忘れるべきではない。
 ハインリッヒの法則という労働事故に関する経験則がある。1件の重大事故の背景には29件の小さな事故と300件の微細な問題があるという統計的法則だ。重大事故を防ぐには300の微細な問題を放置せずに処理する必要がある。マンネリで緊張感が欠けた職場であってはならない。
 大事なのは人材教育を通じて職場がマンネリにならないよう、各自の能力を主体的に引き出す環境づくりをすることだ。
 芝蘭之化である。

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