食糧生産を支える循環型経済
前回は江戸に暮らす人々の食文化や地産地消について触れた。今回は、その食糧を効率よく生産するために用いた肥料について紹介する。
江 戸
江戸の人口は約100万人ともいわれ、人口を支えるためには、大量の食糧が必要だった。その食糧を確保するのに不可欠なのが肥料だ。
化学肥料の存在しない江戸時代に最高級の肥料となったのは、人々のし尿である。それを下肥として売り買いした。本欄で以前、灰や紙屑などの売買を紹介したが、江戸の人々は、し尿までも売り買いしていたのだ。排出物を廃棄物とせず、
経済のシステムに乗せて循環させるサーキュラーエコノミーを地で行っていた。
人々の住む長屋には共用のトイレがあり、大家はそこからし尿を汲み取り農家に売ることで収入を得ていた。店子が生活をするだけで大家の収入になるので、多少家賃を滞納しても追い出されることはなかったという。人情家の大家なら下肥で得た収入で餅を買い店子に配ることもあった。また、道に落ちた馬糞も「馬糞拾い」が拾い集めて農家へ売っていた。こうしたシステムができていたので、江戸の町は清潔さが保たれていた。
令 和
現代では化学肥料が主流になり、衛生面の問題からも下肥を使用することはほぼなくなった。
ただ形を変えて使用されている有機肥料はある。家庭から出る生ごみや落ち葉などからつくる堆肥だ。生ごみを生ごみ処理機などで乾燥させたものを使うのが一般的で、土や葉と混ぜて発酵させていく。こうした有機物からつくられた堆肥は土のコンディションを良好に保ってくれる。
現代の私たちの家庭から出る燃えるごみのうち約4割が生ごみだといわれている。また、その生ごみには多量の水分が含まれているため、堆肥目的でなくても乾燥させてから捨てることで悪臭の予防やごみの削減に貢献できる。
生ごみは下肥と同じように毎日排出されるもの。排出物を廃棄物にしない江戸庶民の知恵を思い出しつつ、生ごみから堆肥をつくって家庭菜園に利用するのもいいだろう。
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