江戸の初物、令和の地産地消
前回は現代の日本人にも馴染みの深い風呂事情について、江戸庶民の工夫を紹介した。今回は江戸の庶民と現代の私たちの食文化について比較する。
現代の私たちが抱える環境問題の1つに食品ロスがある。21世紀の日本は飽食の時代といわれ季節を問わず多くの食材が入手できる。そのぜいたくさと引き換えに本来食べられるのに廃棄される食品が増加し、その量は国内で年間600万トンを超えた。これは国連世界食糧計画(WFP)による飢餓に苦しむ人に向けた食糧援助量の1.7倍に相当する。
江 戸
江戸時代は現代のような高度な輸送システムや冷蔵・冷凍の技術もなかったため、人々はその地域で、その季節に取れたものを消費していた。今でいう地産地消だ。また、保存手段も限られており、食材はその日食べるものを必要な量だけ収穫するか買い、食べきるのが基本だった。食品ロスなど出る余地はない。
そんな環境でも食文化を成熟させたのが江戸だった。その好例は「初物」。江戸の人々は季節の初物を味わうことを粋と考えた。競うように旬を味わい、楽しんだ。この時期なら、ナスやウリ、新子と呼ばれるコノシロの稚魚を酢締めしたものなどが人気だった。
令 和
現代のスーパーでは国内外さまざまな地域で取れた多彩な食材が季節に関係なく常に並ぶ。加えて、特売や抱き合わせ販売などで必要以上に購入してしまうケースも多々ある。また、つくった料理を食べきれず、食品ロスになってしまうケースもある。購入時には人数や量、メニューを考え無駄のないようにしたい。それでも料理が余ってしまったらシチューをグラタンにリメイクするように別の料理として食べきる工夫をしよう。
そんな現代の食文化の一端に地産地消を加えてはどうだろう。スーパーによっては地元農家の野菜を置く店もある。地域のものなら新鮮なうちに店頭に並ぶので、鮮度はよく、輸送のコストや温室効果ガス排出量も少なくて済む。江戸庶民が初物に向けた気持ちと同じように、私たちが地産地消を粋と考えるようになれば環境問題の1つは解決に向かうだろう。
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