サステナブルノート

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特集/2025年 環境白書とは――変化する環境問題の「いま」を知る

記録的な猛暑となった2025年の夏。気候変動にともなう豪雨災害など、各地でこれまでの想定を超える被害に見舞われるケースが増えてきました。
環境問題は、経済の動向や社会情勢などと密接に関わりながら、日々変化しています。環境省ではそうした変化を踏まえ、毎年、環境問題の現状や環境保全に関する施策をまとめた年次報告書として「環境白書」を発行しています。
今回は、2025年6月に発行された「令和7年度版 環境白書」の掲載内容について紹介します。



環境白書とは(目次紹介)

環境白書とは、「環境基本法」に基づいて国会に提出することが義務付けられている年次報告書のこと。1969年(昭和44年)に初めて出された「公害白書」を前身として、1972年(昭和47年)より「環境白書」と名前を変えて公表されています。また現在は環境白書に加え、循環型社会形成推進基本法に基づく「循環型社会白書」、生物多様性基本法に基づく「生物多様性白書」を1冊にまとめた形で作成しています。

本書は第1部と第2部に分かれた構成となっており、第1部は総説として国全体の総合的な施策についてまとめています。毎回、発行の前年の状況を踏まえた環境問題に関するテーマを設定しており、2025年(令和7年版)のテーマは「『新たな成長』を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築」。今回の白書ではこのテーマに沿って、章ごとに「市場」「政府」「国民」という視点から、それぞれの現状や、施策、また課題などを紹介しています。
続く第2部では「地球環境保全」「循環型社会」「生物多様性」の3分野の施策を2024年に実施したものと、2025年に実施予定のものに分けて紹介。政府全体の動きに沿って分野ごとの施策が網羅されています。
また第1部、第2部を通して、関連するキーワードや話題、自治体・企業の個別の取り組みについては「コラム」や「事例」といった囲み記事で別途紹介しています。

まずは全体像を把握するために目次を見ていきましょう。

  令和7年版 環境白書 2024-2025 目次
第1部 総説
テーマ:『新たな成長』を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築
 第1章 「市場」 ~環境とビジネス~
 第2章 「政府」 ~循環経済・自然再興・炭素中立の統合に向けた取組~
 第3章 「国民」 ~地域・暮らしでの環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装~
 第4章 東日本大震災・能登半島地震からの復興・創生

第2部 各分野の施策等に関する報告
<令和6年度に各分野で講じた施策>
 第1章 地球環境の保全
 第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組
 第3章 循環型社会の形成
 第4章 水環境、土壌環境、海洋環境、大気環境の保全・再生に関する取組
 第5章 包括的な化学物質対策に関する取組
 第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策
<令和7年度に各分野で講じようとする施策>
 第1章 地球環境の保全
 第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組
 第3章 循環型社会の形成
 第4章 水環境、土壌環境、海洋環境、大気環境の保全・再生に関する取組
 第5章 包括的な化学物質対策に関する取組
 第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策化

日本が取り組む環境施策について、ポイントとなる点を第1部の内容よりピックアップして以下に見ていきましょう。


脱炭素と経済成長の同時実現をめざして

近年の気候変動にともなうさまざまな環境問題に見られるように、わたしたちの活動は自然と人間が共生する持続可能な社会の範囲(地球の環境収容力)を超えつつあります。人々の暮らしは、食料や水の供給、気候の安定など、自然から得られる「生態系サービス」という基盤の上に成り立っており、この基盤を守っていくことが環境問題における最重要課題の一つといえます。また持続可能な社会の構築に向けては、脱炭素と経済成長の並走をめざすことも必要です。

第1部第1章では、今回の白書のテーマでもある「新たな成長」を導く経済活動を進めるにあたり必要とされる「グリーンな経済システムの構築」についてまとめています。循環経済(サーキュラーエコノミー)やGXの推進、自然再興(ネイチャーポジティブ)の必要性を解説。あわせて世界および日本国内の異常気象による災害などわれわれが直面する環境問題と、またそれらがもたらす経済的影響についてもふれています。

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循環共生型社会の実現に向けたシナジーアプローチ

2024年は、世界および日本国内の年平均気温が、観測史上最高を記録しました。あわせて国内では農産物の収量や品質の低下、熱中症のリスク増加など、気候変動の影響が全国各地で現れています。
このような状況を踏まえ、2024年に閣議決定された「第六次環境基本計画」においては、めざすべき持続可能な社会の姿として、「循環共生型社会」の実現が掲げられました。「環境」「経済」「社会」の統合的な向上に向け、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」、「自然再興(ネイチャーポジティブ)、「炭素中立(ネット・ゼロ)」といったものに横断的に取り組んでいく、シナジーアプローチを推進していく必要があるとしています。

第1部第2章では、環境課題に向けた国際的な動向とともに、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ、ネット・ゼロの同時達成に向けたそれぞれの取り組みをまとめています。


          (図)脱炭素、ネイチャーポジティブ、循環経済に向けたシナジー

引用:環境省 令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書


地域づくりを通じた持続可能な社会の構築

かつての日本では、森や里山、海などの自然から得られる資源が地域の生活を支え、資源は循環して利用されていました。それぞれの地域で、地形や気候、歴史や文化を反映した、多様な風土が形成されてきたのです。そして伝統的な芸術文化やものづくりなども、自然との調和のなかで育まれてきました。

戦後のエネルギー革命、高度経済成長などを経て、人々の暮らしは物質的な豊かさと便利さを手に入れました。しかしその一方で人口の都市部への集中や、開発による環境汚染、海洋プラスチックごみの増加、気候変動などの問題が浮上。海外への資源依存や、人口減少・高齢化などが起こり、これまでに築かれてきた人と自然、また従来のコミュニティが失われつつある状況です。
そうした変化のなかで、国全体として持続可能な社会を構築するためには、おのおのの地域が持続可能であることが必要としています。

第1部第3章では、地域の環境を活かして、そこに住む人々の暮らしを豊かにしていくための取り組みを紹介します。また地域活性化の基本的考え方として「地域循環共生圏」の概念についても説明しています。

             (図)地域循環共生圏の概念

引用:環境省 令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書


おわりに

このほかにも第1部では、東日本大震災・能登半島地震からの復興に関わる取り組みについてまとめています。東日本大震災後の福島第一原発事故による汚染廃棄物の処理に関わるこれまでの歩みや現状。また能登半島地震における被災家屋の公費解体に向けた動きなどを伝えるとともに、今後の継続的な施策の必要性についても触れています。

以上、これまで見てきたように環境問題は「環境」「経済」「社会」といったさまざまな分野での出来事が関わりあい、年々変化しています。その変化と、環境問題の「今」を知ることができる環境白書。地域ごとのさらに詳しい取り組みについては「都道府県環境白書」というかたちでこちらも毎年発行されています。また環境省のWEBサイトでは、過去に発行された白書の内容も閲覧することができますので、さかのぼってみるのもおもしろいかもしれません。

過去の白書はこちら
環境省:環境・循環型社会・生物多様性白書(平成21年版~)


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