展望・課題 最新エネルギー市場

世界と日本のエネルギー市場について解説する識者コラム。寄稿は常葉大学の山本隆三名誉教授です。

温暖化、日本はどう貢献すべきか

 2025年10月下旬、マイクロソフト社の共同創業者ビル・ゲイツ氏が「気候変動は人類を破滅させることはない、資金を気候変動から貧困、疾病対策に振り向けるべき」と、今までの「気候変動は大災害」の見解からの転換を発表しました。「気候変動は中国の詐欺」と主張しているアメリカのトランプ大統領が「ビル・ゲイツが気候変動は誤りと認めた。でっち上げの気候変動に勝った」とSNSで発信する騒ぎになりました。
 ゲイツ氏は気候変動対策を依然重要としており、トランプ大統領は発言を誤解していると指摘していますが、彼が貧困、疾病対策を優先すべきとしたのは、有限な資源をどの分野に投じるかを考えると真っ当なように思えます。世界には依然電気がない生活をしている人がアフリカを中心に6億人います。熱帯の疾病マラリアで亡くなる人は年間60万人です。
 気候変動枠組み条約では、日本はアジアで唯一の先進国に位置づけられ途上国を支援する立場です。2015年に合意されたパリ協定に基づく国が決定する貢献(NDC)で日本は温室効果ガスを2013年度比で2030年度に46%削減、2035年度と2040年度に、それぞれ60%、73%削減する目標を条約事務局に提出済みです。
 日本の平均所得は、シンガポール、香港、台湾は無論のこと、韓国にも抜かれました。購買力平価の数字なので、韓国の人が日本人より使えるお金が多いということです。日本は気候変動に資金を投じるよりも、生活支援の政策を優先させる必要があると思えます。
 では、日本はどう世界の温暖化問題に貢献できるのでしょうか。その1つは、アジアを中心とした途上国での温室効果ガスの削減です。
 日本企業には省エネなどの優れた技術があります。例えば、日本の発電、送電効率は相対的に高いので、その技術を途上国で使えば少ない費用で温室効果ガスを大きく削減できます。パリ協定では先進国が途上国で削減事業を実施し、その削減量の一部を先進国が自国の削減分として利用する制度が認められています。
 東南アジアにおいて発電所などから排出された二酸化炭素(CO2)を捕捉し地中に貯留するCCS事業を日本が実施すれば、地質構造の違いがあるので日本より効果的に削減を進められ、大きな削減量を得られます。日本は2国間の共同事業からの1億トンの利用を2030年までの目標としています。
 相手国との交渉など政府の支援も必要ですが、日本企業は温暖化への取り組みで新たなビジネスチャンスをつくり出せます。途上国が利用可能な技術を持つ日本企業は積極的に海外事業に乗り出すときです。

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