ますます重要になる電気に関わる仕事

 生成人工知能(AI)を中心に先進国と新興国の電力需要が大きく増える可能性があることは、この連載でも触れています。では、AIで世界の電力需要はどこまで伸びるのでしょうか。
 国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までに世界のデータセンターの処理量は2倍になると予測しています。一方、各国が現在の政策を続けた場合の電力需要量の伸びは6兆7600億kW時、今の需要量の2割以上との予想です。その増加分のうちAIによる需要増は10%以下と想定されています。
 ヒートポンプ、電気自動車導入、さらに新興国の経済発展が電力需要量を大きく増やしますが、IEAはAIによる電力需要増の正確な予想は難しいとしています。
 予測が困難な理由は、主に2つあります。1つは、GPUなどの効率の向上がどこまで進むのかわからないことです。もう1つ重要な要素はAIの需要です。前回も触れたように、チャットGPTの電力消費量はグーグル検索の約10倍ですが、チャットGPT4になるとそれが約100倍になります。誰もが高性能なAIを利用するわけではないでしょうが、電力消費量は大きく押し上げられる可能性があります。
 欧米でも日本でも、今まで伸びていなかった電力消費がこれから大きく伸びるとの予想が出ていますが、問題は供給電力の確保です。アメリカではシェール革命により価格が下落した天然ガスとの競争に敗れた石炭を利用する火力発電所が減少を続けていましたが、ここ2年間では石炭火力の削減スピードが大きく落ちています。将来の電力需要をにらむと石炭火力を廃止できないのです。
 日本では現在、データセンターは東京と大阪を中心にIT需要地の近くに立地していますが、これからはアメリカのように電力供給がある場所に立地するケースも増えると思われます。すでに北関東あるいは地方の中心都市の近くにデータセンター建設計画が発表されています。立地点は安定的な電力供給を求め、さらに広がる可能性が高いのではないでしょうか。
 そうなると大きな問題に直面します。地方にデータセンターの建設を手掛けられる人材が潤沢なのかという疑問です。アメリカでは今後、建設のための機械と電気技師40万人が不足するとの予測も出されています。日本でも電力供給の制限と人材面などから、データセンターの建設が進まない可能性があります。
 データセンターを海外に立地すると安全保障に加え、瞬時の利用が必要なケースに対応できない問題が出てきます。国内立地のため政府は電力と人材の確保に真剣に取り組む必要があります。



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