気候を人工的に操作する ── 地球温暖化に挑むジオエンジニアリング
拙策が笑えない深刻な事態に警告
ジオエンジニアリングとは、温暖化を抑制するため、地球の気候システムを人工的に改変しようとする技術やその試みのこと。太陽と地球の間に小惑星を運び、それを砕いてばらまくことで、太陽光を遮り、地球に届く熱を低くするという奇抜なものから、排出される二酸化炭素(CO2)を捕集し貯留するCCSという現在実施されている研究プロジェクトまで、さまざまなアイデアが提案されている。本書はそうしたジオエンジニアリング技術を「全球工学」「気候制御」「捕集貯留」「周辺領域」に4分類し、個別に可能性や効果、安全性、課題などを評価している。
ただし著者は、そのほとんどの技術に疑問符をつける ── 本書で紹介した「とんでもないジオエンジニアリング案」は反面教師です。このような提案が真面目に議論されているほどに現在の暮らしが深刻な曲がり角にあることを認めて、私たちがこの状況を打破する努力を始めるきっかけになればと願っています(222~223頁)──。
宇宙からレーザーを照射して雲を白くし太陽光を反射する、海をかき混ぜて冷たい深海水を海面に移動させる……一昔前なら一笑に付したプランにも安易にすがってしまう状況。読後、その状況を導いた人間の行いを顧思したくなる。
化学同人 2,000円+税
水谷 広 著
1949年、東京都生まれ。71年、東京大学教養学部基礎科学科卒業(教養学士)。73年、東京大学大学院理学系研究科相関理化学修士専門課程修了(理学修士)。78年、米国州立メリーランド大学大学院農学生命科学系研究科化学部博士専門課程修了(Ph.D)。三菱化成生命科学研究所主任研究員、石巻専修大学理工学部教授を経て、98年より日本大学生物資源科学部教授
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