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ザ・ノース・フェイスの創業者はなぜ会社を売ってパタゴニアに100万エーカーの荒野を買ったのか?ダグ・トンプキンスの冒険人生|エコブックス

自然保護という命懸けの冒険

 南米のチリとアルゼンチンにまたがるパタゴニア地方。そこに巨額の私費を投じて広大な国立公園づくりを進めた自然保護活動家がいた。その生きざまを描いた伝記。
 文中、愛称のダグと記されるダグラス・トンプキンスは日本でも人気の高いアウトドアブランドのザ・ノース・フェイス社と世界的ファッションブランドのエスプリ社という2つの大企業を立ち上げた創業者でもある。
 〝資本主義の頂点を極めた49歳のとき、ぐるりと見回し「登る山をまちがえた」〞(8ページ)と気づき、人の手が入っていない美しい自然を守る活動に突き進んでいく。育て上げた企業の持ち分を売却して、数千万ドルを環境運動に携わる非営利組織に移す。ほどなくパタゴニアの荒れた農場を買い取り、サンフランシスコから移り住んだ。
 自ら操縦する小型飛行機で原生の森林や開発されていない川など守るべき土地を探しては買い上げていく。最終的にはそれを寄付して国立公園にする。企業経営では地球にダメージを与え続けてきた。それを回復させなければならない。
 とはいえ地元から見れば豊かな北の大国から来た億万長者。保守勢力やダム開発を進める政府から激烈な反発を受ける。それでもひるまず事業家として身につけたメディア戦略などを駆使して自然を守る戦いを続けた。あたかも困難を承知で挑戦する冒険のようだ。
 もともと企業経営や自然保護活動と並行して挑んできた命懸けの冒険は数知れない。山岳スキー、カヤック、ロッククライミング…登頂の難度はエベレスト以上ともいわれるフィッツロイ山で雪洞に何日間も閉じ込められた経験も描かれる。副題にある「冒険人生」そのものがつまった1冊だ。
 著者はアメリカの有力紙などで活躍する著名ジャーナリスト。



山と溪谷社 2,860 円(税込)

ジョナサン・フランクリン 著
作家・調査報道記者。チリのサンティアゴと米国のニューヨークを中心に活動しており、ワシントンポスト紙、ニューヨークタイムズ紙、ガーディアン紙、デルシュピーゲル誌に記事を書いてきた。ドキュメンタリーを制作する、60ミニッツ、CNN、ボイス・オブ・アメリカに出演するなど、20年以上にわたり中南米をカバーしてきた。


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