【環境関連の組織・機関】第4回/気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

 地球温暖化対策の国際的ルール「パリ協定」も、それ以前の枠組み「京都議定書」も、世界各国の承認を経て決められた。承認にはその前提に、温室効果ガスの増加が気候変動をもたらすなど科学的根拠が提示されなければならず、それらを分析し示す信頼のおける機関も必要だ。今回はその任を負う組織を見ていく。
※本記事は環境市場新聞第64号(2021年4月発刊)に掲載されたものです。


地球温暖化の影響を科学的に評価し
リスクの緩和や適応策を示す国連組織

 「気候変動に関する政府間パネル」。英語表記は「Intergovernmental Panel on Climate Change」で「IPCC」と略称される。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された国連組織。2020年12月時点で195ヵ国が加盟。事務局はスイスのジュネーブにある。地球温暖化が原因と見られる洪水や干ばつなどの気候変動の影響が深刻化したため、関連情報を集約し、その評価を国際社会に提供する目的でつくられた。

 これまでに5つの評価報告書を公表した。1990年の第1次報告書は温暖化対策の国際的な基軸である国連気候変動枠組み条約の創設において重要な根拠となり、第2次報告書は京都議定書、第5次報告書はパリ協定と、それぞれの取り決めの際の客観的な裏づけとなった。現在は2022年4月公表予定の第6次報告書の作成を進めている。
 報告書は、温暖化の「自然科学的根拠」、それがもたらす作用や対応策などの「影響、適応、脆弱性」、温室効果ガス排出削減策などの「気候変動の緩和」の3つに分けられ、それらをまとめた「統合報告書」も公表される。加えて国連などの要請に応じて特定分野の特別報告書も作成する。世界の科学者や政府関係者がボランティアで携わり、これまで公表されている論文などを分析して最新の情報としてまとめる。新たな独自研究はせず、政治交渉もしない。また日本の研究者も多数参加しており、共同議長など重要ポストにも就いている。
 組織は、3分野の報告書作成のため設置された第1から第3までの各作業部会と、それぞれの国が自国の温室効果ガス排出量と吸収量を算定して目録(インベントリー)をつくるための方法などを決める「インベントリー・タスクフォース」に分かれている。
 IPCC報告書は、情報の積み重ねによって回を追うごとに内容の緻密さが増し、第5次報告書では、温暖化の原因が95%以上、人間の活動によるものであると明示した。2007年、こうした一連の活動が認められ、IPCCは元アメリカ副大統領のゴア氏とともに「人為的気候変動についての知識を広め、その対策に尽力」したなどの理由によって、ノーベル平和賞を受賞している。


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