Vol.2 大地の躍動を直に〝水陸の大展望〞|雲仙天草国立公園
長崎県を中心に熊本と鹿児島をまたぐ雲仙天草国立公園。1934年に日本で最初の国立公園の1つとして指定された雲仙地域と1956年に追加された天草地域で構成される。火山活動がつくり出したダイナミックな景観が楽しめる雲仙、大小120の島々から成る海洋景観が特徴の天草。大地の躍動を直に感じられる水と陸の大展望が広がる国立公園だ。20以上の山が連なる雲仙岳は今も火山活動があり1990年から1995年にかけての噴火は記憶に新しい。蒸気が地表から激しく噴き出し「生きている地球」を間近で見学できる雲仙地獄は人気の観光名所だ。
「地獄」とは、地下のマグマだまりから上昇する火山ガスが地表の岩石を溶かし噴気を上げる場所をいう。その位置は徐々に東に移動しており、少し西にある旧八万地獄はすでに活動がおさまった場所で少量の蒸気と温泉が湧き出るのみ。さらに西には数千年前に活動を終えたとみられる原生沼があり、今は植生が回復し湿地帯に。火山活動による地質・植生の変遷を徒歩圏内で観察できる貴重なスポットになっている。
春にはツツジの1種ミヤマキリシマが花盛りを迎える。地獄に上がる白い湯けむりと、ピンク色の花がつくるコントラストが美しい。また昔放牧が盛んだった雲仙では草原とミヤマキリシマが織りなす風景も特徴的だが、放牧の衰退で樹木が増え、その光景を楽しめる場所は減少。現在は、公園指定当時の原風景を維持しようと、田代原を舞台に官民連携で草原と群落の保全活動を進めている。

単なる保護だけでなく自然と人との共存を踏まえた取り組みも行う。1983年には、国立公園指定50周年に際したまちづくりの計画として「雲仙プラン50」を策定した。コンセプトは明治・大正の頃外国人避暑地として開発された時代。公園内の建物は、赤茶色の屋根と白壁に揃えることで景観維持を図っている。また、地域住民が来訪者に対し、地元の魅力を自らの言葉で発信できるよう、観光局が主体となって、文化や歴史、自然の価値などの情報をわかりやすくまとめた文書「インタープリテーション全体計画」も作成した。
この公園を担当する自然保護官の日比野晃裕さんは新たな自然資源の活用も進めたいと考える。その場所は1991年の噴火でできた平成新山。国立公園指定時にはなかった溶岩の山だ。
「災害対策基本法による警戒区域に指定されているため今は防災関係者しか登れませんが、将来的にはガイド同行など条件つきで一般の人も入れるような仕組みづくりができないかと、地元の関係者と検討を始めようとしています。麓など一部は人の手で植生復元した箇所もありますが標高の高いところは手を加えず自然のまま。日本で最も新しい山の1つであり、まだ植生がほぼないので全方向が見渡せる。本公園のキーフレーズ〝水陸の大展望〞を今一番実感できる場所なのです」
新たな名所からの眺望を楽しめるのはまだ先だろうが、今もなお地面の下で火山活動が行われているのが実感できる雲仙天草国立公園。地球の鼓動を感じながら景観を眺めるのは得難い経験だ。
現地訪問レポート
今回は自然保護官の方に現地でお話を聞くべく、雲仙へ取材に行きました。雲仙の観光拠点である温泉街へは、長崎空港から車で約1時間。公共交通機関を利用する場合は、諫早で乗り換えてバスで2時間半です。バスは定刻通りに発車しますので、乗り遅れに注意しましょう(私は空港⇒諫早のバスが渋滞で遅れてしまい、諫早⇒雲仙のバスに乗り遅れました。カフェがあって助かりました)。

雲仙の温泉街に着くとすぐに広がっているのが、この雲仙地獄!ワオ!別世界かな!?という光景に、車窓から眺めるだけでも胸が高鳴ります。お宿に荷物を置いて、さっそく散策開始。コンパクトな温泉街なので、地獄へはどこのお宿からでも歩いて行けます。

もうもうと立ち昇る湯気から地表が見えます。湯気のなかから現れたのは、ボコボコと湧き出る温泉。地獄のなかではそこら中で温泉が湧いています。おお~…すごい…!レンズがすぐ曇ります(笑)。

一帯の地面は火山ガスの成分で真っ白。高低差はありますが、じっくり歩いて回っても1時間程度です。特に順路はないので自由に見て回れます。「清七地獄」、「お糸地獄」など、さまざまな由来で名前が付けられたスポットがありますが、最奥にある「大叫喚地獄」が現在もっとも活動が盛んな地獄ですので、ここは見ておくと◎です。
その昔キリシタン弾圧の際には、この熱湯で拷問したとか何とか…(ブルッ)

こちらが大叫喚地獄。だいぶダイナミック!(写真を後で見直したら風で湯気が霧散してしまっていてダイナミックさが全然伝わらないことに気付きました!!)
この辺りで足元の岩に触ってみましたが、当然なのかもしれませんが熱くて驚きました。

遊歩道の脇に、お湯に触れるところがあったので指をちょっと入れてみました。熱めの温泉!という感じ。視線を上げたら、「危険・触るな」の看板が…。…よい子は触らないように!季節や噴気の状況などで水温が変わるのでしょうか。わたしが触れたときはそこまで熱くなくてよかったですが、たまたまなのかもしれませんので、お気を付けください!

地獄内には、たくさんの管が引かれています。温泉をお宿に引くためのものなんだろうな~と眺めていたのですが、翌日自然保護官事務所で聞いた話によると、このなかのいくつかは燗付(かんつけ)というものだそう。お宿⇒地獄⇒お宿といった具合で引いた管に水を通すと、地獄を通過する間に熱せられて、お宿に戻ってくる頃にはお湯になっている!という仕組み。湯沸かし用のガス代が浮きますね!
ただ、地獄付近は硫黄性のガスを含んだ空気のため、エアコンの室外機などメンテナンスの回数が下界より多いそう。恩恵と代償の両面があるのですね。これぞ大自然。

地獄を出て道路を反対側に渡り、数分歩くと「旧八万地獄」があります。噴出口が移動し、こちらは活動を終えた「老年期」にあたり、わずかな湯気と温泉が湧き出るばかり。噴気口は少しずつ西へ移動していて、かつてはここが最も盛んだったそうです。噴気がおさまっているので、現在のメインの地獄と比べて木や草といった植生が回復しつつあります。もう少し東にある「原生沼」は完全に活動が終わり、一面の草原(湿地帯)になっています。何万年にも及ぶ地質の変化を目の当たりにできて、何だか感動してしまいました。
とても静かで、小鳥の声がよく聞こえる旧八万地獄。とは言えまだお湯が沸いているだけあって、舗装の石畳は熱いです!冬はこたつを設置するイベントもあるとか。寒い時期に訪れたらぜひ体験してみたいです!

さて、私が雲仙で楽しみにしていたことのひとつが温泉卵!地獄内の売店で売っているらしいからおやつに~…と思っていたら、ななんと平日の夕方だったからか、はたまた定休日だったのか、人影がなく…!悲しみに暮れ温泉神社を散策していたら、無人販売所が!やった~!とよろこび勇んで近付くと、3個セット売り…!ソロで3個はきつい。サステナブルコラムも担当する人間として、食品ロスは、ダメ絶対。ここでも悲しみの退散。私は温泉卵に縁がないのね…と、トボトボと食事のためお茶屋さんに入ったところ…!

…やりました!ありました!単品の温泉卵~~~!!!名物・地獄そうめんとともに、おいしくいただきました!ほのかに温泉の香りがする気がする卵と、優しいお味のそうめんで、お腹も心も満たされました!
今回、短い取材日程だったので温泉街近辺の散策しかできませんでしたが、雲仙の魅力はほかにも盛りだくさん。自然保護官の方におすすめいただいた普賢岳登山は、かつて山ガールだった身としてはいつかチャレンジしてみたいものです。本格的な登山でなくとも、雲仙の雄大な景色を眺められる低山登山のコースもあるそうです。雲仙へ旅行の際は、ぜひ自然と触れ合ってみてくださいね!























































