捨てずに修理するのが当たり前
前回は江戸時代における紙の貴重さについて触れた。今回は江戸の町で活躍した修理を専門にする職人たちについて紹介する。
江 戸
日々使っている生活用品が壊れてしまったときどうするか。新品を買いなおすのか、または直して使い続けるのか。現代の日本では圧倒的に買いなおすことが多いが、江戸時代の庶民はほとんどの物を修理して使い続けた。当時は資源が少なかったという背景もあり、物は捨てずに修理するのが当たり前で江戸の町には多くの修理職人がいた。
お椀が割れれば「瀬戸物焼き継ぎ」が破片を継いで直し、履物が壊れれば「雪駄直し」が草履や雪駄を修理した。江戸の庶民は壊れてしまった生活用品を捨てずにとっておき、定期的に町に回ってくる職人に修理を依頼していた。
中でも鍋や釜といった金属類は貴重品で、庶民にとっては大切な家財だった。しかし当時の鋳造技術では金属内部に鬆す(空気が残ってできる微細な空洞)が入ってしまい、それが原因で使っているうちに穴が開いたり底が抜けてしまったりした。そんなときにお世話になるのが鋳掛屋(いかけや) だ。鋳掛屋は溶かした金属で穴を継いだり、ふさいだりしてくれる。そうして庶民は修理を重ねながら代々大切に鍋釜を使い続けていた。
鍋や釜を修理する鋳掛屋天秤棒でふいごなど修理道具を携え「いかけいかけ」と町中で呼び掛けて仕事を請ける。
作業するのはその場。ふいごで炭を熱し、鉄などを溶かして鍋や釜の穴をふさぐ。
令 和
江戸から現代に時が流れるにつれて技術も発達し、多くの物は消費する時代になった。鍋をはじめとした生活用品は壊れにくく、また壊れても買い替えるのが一般的となり、江戸の町中にいたような職人たちは姿を消していった。
だが「修理して使う」がゼロになったわけではない。例えば靴はどうか。お祝いに親から買ってもらった靴。頑張ってお金を貯め手に入れた靴。値段の張る革靴は定期的にメンテナンスに出したり、靴底を交換したりして長く使い続ける人も多いだろう。江戸庶民に思いを馳せ、短いサイクルで消費するのではなく、長く、大切に使える物を選んで購入するというライフスタイルへ切り替えるのは単なる懐古主義ではない。
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