• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

物流企業が届ける持続可能な社会#34/ヤマトグループ

 いまや小口貨物輸送の代名詞ともいえる「宅急便」を展開するヤマト運輸株式会社(本社:東京都中央区)。同社を中核とするのがヤマトグループである。1919年の創業以来、物流事業を主な生業として、グループ従業員数は22万人を超える(2021年9月30日現在)。
 「かなり前から低炭素車の導入やモーダルシフト(トラックと鉄道を組み合わせた貨物輸送)など、環境にやさしい物流のあり方を模索してきました。そうした中で起きた2011年の東日本大震災は、当グループがトータルで地球環境の保全に取り組むきっかけになりました」(サステナビリティ推進部環境戦略課長池田誠さん)
 震災の翌年、環境推進課を立ち上げた。2019年にはグループとして体系的にサステナビリティ経営に取り組むため、持株会社のヤマトホールディングス株式会社に専任部署「ESG戦略立案推進機能」を設置した。各グループ会社にもサステナビリティ担当者を配置し、グループを挙げて持続可能な社会の実現を目指している。
 また2020年1月に中長期のグランドデザイン、経営構造改革プラン「YAMATO NEXT 100」を発表。サステナビリティへの取り組みとして、環境ビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」を掲げた。そのマテリアリティ(重要課題)に「エネルギー・気候」「気」「資源循環・廃棄物」「社会と企業のレジリエンス(強靭性)」の4つを抽出している。
 このうち「エネルギー・気候」では2050年の目標を二酸化炭素(CO2)自社排出実質ゼロとした。目標達成に向けたグループ内での具体的な活動で、今特に力を入れているのは「再生可能エネルギー(再エネ)の機会拡大」「事業所内の照明のLED化」「低炭素車両の導入」の3つだ。
 「再エネの機会拡大」については再エネ由来の電力調達方法の検討などを進めている。「照明のLED化」は、今後全国の事業所で導入を進めていく。3つ目の「低炭素車両の導入」では、「事業を行ううえで排出するCO2のうち5~6割が車両から排出されていることを考慮すると、電動化は重要な取り組みと捉えています。現在全国で約600台の電動車を導入していますが、今後も自動車メーカーと協議しながら導入を積極的に推進していきます」(グリーンイノベーション開発部モビリティ課長小澤直人さん)という考えだ。

日野自動車が開発した超低床・ウォークスルーの小型BEVトラック。


 さらに自社グループにとどまらず、パートナー企業も含めたサプライチェーン全体での課題解決を目指す。小澤さんは「自社グループはもちろん、パートナー企業を含めてグリーン物流、脱炭素化に向けて取り組むことが重要です。パートナーには中小企業も多く、パートナーの課題解決も含め、ともにサステナブルな物流体制を構築したい」と話す。
 日本の隅々まで網羅する物流ネットワークを構築してきたヤマトグループ。そのひた向きな姿勢を持続可能な社会の実現にもつなげていく。
こぼれ話

今回お話をお伺いしたヤマトグループは、スケールの大きさを感じました。グループ従業員数は22万人を超えており、私がエコストーリーの取材をした企業のなかで桁違いに従業員が多い企業グループです。このような数の従業員が一つの集団となって活動していくのは大変でしょうが、さらに同社グループはパートナー企業を含めてグリーン物流、脱炭素化に向けて取り組んで行こうとしています。パートナー企業を含めた取り組みは非常に困難を伴うとは思いますが、今後に注目していきたいです。

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