• 知っておきたい再エネ
  • 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーのさらなる普及と、安全・安心なエネルギーの供給体制構築のために重要なことは何か。現状から読み解きます

【第3回】太陽光発電の動向――コスト低減と周辺環境

 前回は風力発電の累積導入量や洋上風力などを追った。今回は太陽光発電のコスト推移と、さらなる再エネ拡大に向けた動きに目を向ける。

太陽光発電コストの推移

 2021年8月、経済産業省は太陽光発電の2030年時の発電コストが1kW時当たり8.2〜11.8円(事業用)になり、同時点の他電源に比べ最も安くなるとの試算を公表した。太陽光パネルの価格低下などが要因だ。
 太陽光は2012年の固定価格買取制度をきっかけに大幅に増えた。同年までの累積導入量は約7GWだったが2020年には約71GWにまで増加している。太陽光パネルの価格も2012年の1kW当たり22.5万円が2020年には12.1万円になっている。

再エネ主力電源化

 ただコスト低下がそのまま発電量の増加にはつながらない。まず、国内に残された太陽光の適地が少ないことが挙げられる。農地、空港、ため池、駐車場などが代替候補に挙がり規制緩和も進んでいるが、設備導入には周辺の自然環境や住民との調和が欠かせない。
 政府のエネルギー基本計画では2030年度に温室効果ガス排出量46%削減(2013年度比)の目標を達成するため再生可能エネルギー(再エネ)の比率を現状の約20%から約38%に拡大させるとした。再エネ主力電源化だ。だが既存の送電インフラには再エネを消費地に送る十分な余裕がない。
 その課題に対し進められているのが次世代送電網の整備である。今年6月に策定予定の「クリーンエネルギー戦略」には①北海道と東北・東京を結ぶ送電網の新設②九州と中国間の増強③北陸と関西・中部間の増強││を柱に総額2兆円超の投資計画が想定されている。ここでは「交流」ではなく送電時の損失が少ない「直流」での送電方式の採用も検討する。
 発電量が安定しない再エネを一時的にためる蓄電池も導入促進への法整備が進む。電気事業法の改正で、1万kW以上の蓄電池を持つ事業者が送電網への接続を要望した場合、大手電力会社はこれに応じるよう義務を課す。これまでは火力や再エネなど従来の発電設備が対象だったが、その発電事業に蓄電池が加わる。
 太陽光など再エネの拡大には、送電網や蓄電池の強化など周辺環境の整備が必要だ。国の後押しが不可欠な分野だけに、今後も政策の進展が注目される。

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