サステナブルノート

省エネ、エコといった日常の暮らしに彩りを添える豆知識から、地球温暖化や環境問題まで、サステナブルな暮らしを送るのに役立つ広範囲な情報を紹介。また、随時特集と銘打ってその時期ホットな話題を深掘りします。

持続可能な航空燃料「SAF」に注目!


年末年始のホリデーシーズン、長期の休みを取って旅行を楽しむ方も多いのではないでしょうか。そんな旅行に欠かせない移動手段のひとつに飛行機がありますね。近年、あらゆる分野で脱炭素に向けた取り組みが進んでいますが、航空業界にとって飛行機燃料の脱炭素化は重要な経営課題です。

そんななか、注目が集まるのが持続可能な航空燃料「SAF(サフ)」です。今回はSAFについてどのような原料をどのように加工してつくられるのか、また導入にあたっての課題は何かなどについて紹介します。




持続可能な航空燃料「SAF」が主流になる!?

現在、一般的な飛行機は「ケロシン」という灯油を燃料にして飛んでいます。ケシロンは石油を精製して作られる燃料ですが、このケロシンの使用量を減らして、代わりの燃料を使う動きが出ています。そのひとつが最近注目を集めているSAFです。

SAFはSustainable Aviation Fuelの略でサフと読み、持続可能な航空燃料のこと。主な原料として廃食油や微細藻類、木くず、サトウキビ、古紙などが上げられます。
SAFの一種であり微細藻類や木くずからつくられる「バイオジェット燃料」は、燃焼させるとCO2を排出しますが、その元となるバイオマスはCO2を吸収して再生産されるため、全体として見れば大気中のCO2が増加しない燃料とみなすことができるのです。

国土交通省のサイトでは運輸部門の二酸化炭素(CO2)排出量について、1人を1㎞運ぶ際に排出するCO2が何グラムになるかを公表しています。これによると最も多いのは自家用乗用車の127g-CO2/人kmで、その次が航空で94g-CO2/人kmとなっています。 航空分野では、SAFがCO2削減に高い効果を発揮するとして、今後の活用が不可欠といわれています。


              輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(旅客)

引用:国土交通省 運輸部門における二酸化炭素排出量

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サステナブルノート(2025年5月7日)
「サーキュラーエコノミーが切り開く新しい未来」
ttps://econews.jp/column/sustainable/14105/



SAFは何でできている?

それでは、SAFはいったい何からできているのでしょうか。現在、さまざまに研究が進んでいますが、製造法と主な原料は以下の通りです。

製造法製造法と主な原料
①Hydroprocessed Esters and Fatty Acids(HEFA)水素化処理エステル・脂肪酸廃食油(店舗などで使われた食用油や植物油など)の脂肪酸エステルに水素をくわえ、酸素を除去する方法で、現在の主流
②Alcohol To Jet(ATJ)第一世代バイオエタノール(コーン、サトウキビなど)、第二世代バイオエタノール(藻類、古紙、廃棄物など)からアルコール分を抽出し、触媒を用いてジェット燃料に変換するする方法
③ガス化FT合成廃プラなどのごみを蒸し焼きにして分子をバラバラにした後に合成し直すことで液体燃料にする方法
④e-fuel二酸化炭素と水素を合成してつくる人工燃料のこと。再生エネルギーを活用し、水を分解して水素をつくり空気中の二酸化炭素と燃料に合成することでクリーンなエネルギーができる


①は現時点で最も簡易に燃料がつくれるため、主流となっている方法です。ただ最近は廃食油の価値が見直されてきた結果、廃食油が値上がり傾向にあります。
②の第一世代バイオエタノールは飼料などからつくられたアルコールで、アメリカではこれをガソリンに添加したバイオ燃料が盛んに使われています。第二世代バイオエタノールは、第一世代の研究で得られた知見を基に、藻などの植物や古紙などのバイオマス原料から生成されたエタノールのこと。これらからアルコール分を抽出し、ジェット燃料に変換します。
③は廃プラなどのごみを蒸し焼きして二酸化炭素を抽出し、これを一酸化炭素に変換した後触媒で一酸化炭素と水素を反応させ、液状炭化水素をつくります。
④については、合成燃料の生成は戦前から行われていますが、最新式の手法では太陽光発電などの電力を用いて水を分解して水素と空気中の二酸化炭素を液体燃料にします。

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サステナブルノート(2022年11月22日)
「GX時代の新たな燃料「e-fuel」が世界を変える!?」
https://https://econews.jp/knowledge/sustainable/7825/

新技術はまだ開発途上です


廃食油を原料とする方法はこれまで処分されていた油脂が有効利用できるという点で環境にも良い技術ですが、近年は廃食油の価格が上昇している点が懸念点です。また、第一世代バイオエタノールはバイオ燃料などと競合しますが、第二世代バイオエタノールを使えば、環境負荷の低減が実現します。

ガス化FT合成もプラスチックごみなどを原料とするため、環境負荷の低減にも寄与します。クリーンなe-fuelも同様ですが、これらの技術はいまだSAFを量産できるまでには至っていません。実用化に向けてはコスト面など、解決しなければいけない課題を多く抱えているのが現状です。

具体的に一般的なジェット燃料のコストについては、世界情勢などによって変化するものの、平均して1リットル当たり100円程度です。これに対しSAFは製造方法の違いによって1リットル当たり200円から1600円がかかります。 原油を精製する従来のジェット燃料に比べ、複雑な工程を経てつくられるため、仕方のない面はありますが、量産化などの技術革新が生じない限り、導入による経済的インセンティブが働きづらく、これが導入のネックとなっています。

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空港が環境と向き合う エコエアポートって知ってる?
https://econews.jp/knowledge/sustainable/16043/



航空機の脱炭素化実現に向けて


日本は島国で諸外国との往来は飛行機に頼る部分が大きいのが実情です。また、観光客受け入れ(インバウンド)施策の推進という意味でも空の脱炭素化は重要です。

航空業界ではSAFだけでなく、電動モーターを組み合わせて推進力を得る電動ハイブリッド推進航空機や、水素を燃料として飛ぶ水素航空機など、さまざまな形で脱炭素化に取り組んでいます。 国土交通省の「ソラカボ☆ポータル(空のカーボンニュートラルポータルサイト)」では、そうした取り組み内容を紹介しています。興味のある方はぜひアクセスしてみてください。

参考:国土交通省の「ソラカボ☆ポータル(空のカーボンニュートラルポータルサイト」



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