
「サーキュラーエコノミー」が切り開く「新たな未来」

資源の有効活用についてはこれまでも「3R」「5R」といった取り組みが進んできました。今回紹介するのは資源循環型経済システム「サーキュラーエコノミー」です。これは資源循環を効率化し、持続可能な社会を実現しながら、経済的な成長もめざすという、成長志向の経済システムです。今回はサーキュラーエコノミーの仕組みや効果、メリットなどについて説明します。
従来の経済システムは「線形経済」

サーキュラーエコノミーの説明に入る前にこれまでの経済システムについて考えてみましょう。従来の経済は大量仕入→大量生産→大量販売→大量廃棄という一方向のフローで構成されています。資源を大量に取り出し、それらを機械で効率的に製品化し、消費者に提供することで、経済成長を実現してきたのです。こうした経済システムを「リニアエコノミー・線形経済」と呼び、日本の高度成長期などがこのスタイルに当てはまります。その一方で線形経済は公害やごみ問題などさまざまな弊害も引き起こしてきました。これらの経済活動は結果として今日の環境問題、気候変動、資源の枯渇といった事象につながっています。さらに現在は生物多様性の重要性が注目を浴びていますが、生物多様性がなぜ重要かというと、多様性が自然を豊かにして壊れにくくし、人間の暮らしの豊かさを支えるからです。ところが線形経済では大量の資源開発などを通じてしばしば多様性を失うような事態が生じます。このように現在の経済システムを続けることは持続可能性の観点から大きな問題があるのです。
こうした問題を解決するのが、線形ではなく資源を循環させ、廃棄物をなるべく出さない「サーキュラーエコノミー・循環経済」です。次章でその具体的な仕組みを紹介します。
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波及効果が高いサーキュラーエコノミー

この図は資源エネルギー庁のサイト成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?に掲載された自動車産業のサーキュラーエコノミーの例です。サーキュラーエコノミーは資源を循環使用し、廃棄物を削減するだけではありません。この図にあるようにたとえばカーシェアリングの推進や再生産2.0のような新たなビジネスモデルも提唱します。新しい産業や雇用の創出までも視野に入れ、結果的に持続可能な成長を実現し、経済的成長も実現する点がサーキュラーエコノミーの大きな特長といえます。
しかし、サーキュラーエコノミーが全体で実現するためにはまだまだ新たな技術の開発に取り組まねばなりません。たとえばリサイクル手法1つとっても利用素材をそのまま再生して再利用する「マテリアルリサイクル」や、化学反応を介して資源を原料に分解する「ケミカルリサイクル」など、素材に合わせて最適な手法を選ぶ必要があります。 現在、企業や大学・研究施設などでさまざまな技術開発が行われており、1つひとつ実現していくことで、徐々にサーキュラーエコノミーがシステムとして確立していくと予想されます。
リサイクルが進めば、CO2の排出量削減にもなります。たとえば、PETボトルリサイクル推進協議会によれば、ペットボトルの場合、リサイクルを活用することで、CO2の排出量を約42%削減できるそうです(PETボトルのリサイクルによるCO2排出量の削減効果算定)。サーキュラーエコノミーの定着は地球温暖化の防止にもつながります。
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不成立時に見込まれるリスク

一方で、サーキュラーエコノミーが成立しない場合にはどのようなリスクが見込まれるでしょうか。
①資源枯渇リスク
資源の乏しい日本では資源の輸入リスクに向き合う必要があります。今後グローバルサウスとよばれる新興国が経済成長を遂げると、世界各地で資源不足になることが予測されています。また、資源は、それを多く持つ国の思惑によって供給量が左右されます。たとえばレアアースなどの資源供給国がこれらの輸出をやめると、精密機械産業などに大きな影響が生じます。
②廃棄物処理上のリスク
廃棄物処理の問題も見逃せません。現在日本の各地でごみの焼却や圧縮といった減容を通じ、処分場の延命が図られていますが、このようなサイクルを続けていれば、将来的には廃棄物を処分できる場所がどんどん少なくなるでしょう。海外への搬出についてもバーゼル条約などの制約があり、今後ますます難しくなることが予想されます。
③経済成長上のリスク
今後高齢化と人口減少が進む日本では、さまざまな面から経済の停滞が予想されます。これらを食い止めるために効果的なのがデジタル技術などを活用した既存産業の効率化と新産業の開発です。その際に循環型のシステムを実装することは持続可能性に大きく貢献するでしょう。また、欧米ではサーキュラーエコノミー関連の規制措置の導入が進んでいます。これらに対応した生産体制を築くことが今後の国際競争で生き残る条件になることが予想されます。
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持続可能性と経済成長を実現する

政府は「循環経済を国家戦略に」を副題にした循環型社会形成推進基本計画を2024年8月、閣議決定しました。計画のなかではサーキュラーエコノミーへの移行を国家戦略と位置づけています。具体的には持続可能な社会づくり、資源循環、地域の循環システム構築、廃棄物管理、国際的な取り組みの5つに関連する項目を重点分野に設定し、取り組みを促すとしています。
実際、「線形経済」のような大量消費・大量廃棄を続けていけば、早晩行き詰まることが予想されますが、現在の経済システム移行はいまだ道半ばであり、ごみ処分などは今後もしばらく問題となることが予想されます。一人ひとりができることは少ないですが、日ごろからリデュース・リユース・リサイクルの3Rを意識することで、少しずつ良い変化が生まれてきます。地球の未来を明るいものにできるよう、自分事としてこれらに取り組み、少しずつでよいので自らの手でサーキュラーエコノミーの実現を図りましょう。
環境ニュース

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https://econews.jp/news/domestic/13311/
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