オゾン層が回復しているって本当?|11月3日はオゾンの日

11月3日は日本医療・環境オゾン学会と日本オゾン協会が制定した「オゾンの日」。オゾンの化学式が「O3」であることから、「いい(11)オゾン(O3)」のごろ合わせで決められたそうです。「人間の生活や地球環境に大いに貢献しているオゾンに対する正しい理解を広める」ことが目的のこの記念日は2018年に正式に登録されました。
オゾンと聞くと「オゾン層」の存在を思い起こす方も多いのではないでしょうか。かつては環境問題の代表格として知られました。今回はオゾンについて、そしてオゾン層の現状や回復の状態からみえる環境問題について考えます。
オゾンとは
オゾンは酸素原子3個から成る気体で、化学式は「O3」。自然環境にごく低濃度で存在しています。フッ素に次ぐ強い酸化力をもっていて、殺菌やウイルスの不活性化、脱臭・脱色など幅広い用途に使われています。
日本においては食品添加物としても認められているほか、医療や農業、畜産などの分野でも利用されていますが、もっとも身近な例として水道水があげられます。東京都や大阪府では高度浄水処理工程の一部として、水道水に含まれる有機物の分解に用いられています。高濃度では人体に有害とされるオゾンですが、物質構造としては不安定。有機物を分解する反応や自然に分解することで最終的に酸素(O2)に戻るため、安全性に問題はありません。そのほかにも、さまざまな処理工程で分解した有機物とともに除去されるため、浄水場から出ていく水にはオゾンは残りません。
関連コラム

サステナブルノート(2023年3月22日)
3月22日は「世界水の日」!水の使い方を見直そう
https://econews.jp/knowledge/sustainable/8521/
大気中に存在する2つのオゾン
大気中に存在するオゾンは2種類あり、1つは成層圏に広がる「オゾン層」、もう1つは地表付近で生成される「光化学オゾン」です。この2つは成り立ちも役割もまったく異なります。大別すると、オゾン層は環境を守ってくれるもの、光化学オゾンは環境に有害なもの、といえます。
| 生成 | 働き | |
| オゾン層 | 大気中の酸素分子(O2)が太陽からの強い紫外線を受け原子(O)に分解され、別の原子と結合することでオゾン分子(O3)が生成され、オゾン層を形成する。 | 太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生物が生存できる環境を保つ。 |
| 光化学オゾン | 大気中に含まれる窒素酸化物(NOx)や炭化水素(HC)が、太陽からの紫外線を受けて光化学反応を起こすことで生成される。 | 大気汚染物質と組み合わさることで光化学スモッグの原因物質となる。 |
オゾンが関連する環境問題

光化学オゾンが「光化学スモッグ」の原因物質となることを前段でお伝えしました。近年では発生頻度は減少傾向にある光化学スモッグですが、現在でも時折都道府県ごとに注意報などが発令されることがあります。
光化学スモッグは高度経済成長期の末期である1970年代前半に初めて確認されました。水俣病やイタイイタイ病といった公害の発生と同時期にあたります。おもな原因は、自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物。炭化水素との光化学反応により光化学オゾンやアルデヒドなどの有害物質(光化学オキシダント)が生成され、白いモヤとなって遠くが霞んで見える現象です。「日差しが強い」、「気温が高い」、そして「風が弱い」ときに特に発生しやすくなります。大気汚染の一種で、目がちかちかする、喉が痛くなる、咳が出るなどの健康被害をもたらす可能性があり、注意報が出ている時は子どもや高齢者、喘息などの持病がある人は特に注意が必要です。
光化学スモッグの注意報が発表された日数は1973年の年間328日をピークに、1970年代は年間250日を超える年も複数回ありましたが、自動車の排ガス対策で窒素酸化物を除去する触媒が搭載されるようになったことで次第に減少。2010年代以降は年間50~100日前後を推移するまでに減りました。
ただ、大気中の濃度が注意報レベルに達していないだけで現在も発生していることにはかわりありません。健康に配慮が必要な人は注意報をこまめにチェックするとともに、公害が少しでも減るよう、自動車を運転する際はアイドリングを減らす、低公害車を選ぶといった消費行動も重要です。
関連ニュース

環境ニュース(国内)
2022年度温室効果ガス 過去最低を記録
https://econews.jp/news/domestic/11844/
オゾン層の現在

一方のオゾン層についても、1970年代以降「オゾン層の破壊」が問題になりました。こちらの原因はフロンガス。炭素、水素、フッ素などからなる人工のガスで、エアコンや冷蔵庫、スプレーなどの冷媒として使われかつて大量に大気中に放出されていました。フロンは地表では分解しにくく、大気の流れによって成層圏に達し、紫外線を受け分解、塩素を発生させます。この塩素が触媒として働き、オゾン層を形成するオゾンを壊してしまうことにより、世界のオゾン全量が減少していきました。減少のピークは1980年代。1985年に南極上空に巨大な「オゾンホール」が発見され話題になりました。
この事態を重く受け止め、1987年のモントリオール議定書でフロンに関する規制が強化され、1995年には特定フロンの生産が全廃されました。
これによりオゾン層破壊物質の濃度は減少傾向にありますが、フロンは分解されにくく大気中に長期間残留するため、オゾン層の回復には時間がかかっています。規制により回復しつつありますが、今もなお世界のオゾン全量は1980年以前と比べると少ない状態が続いています。
現在の見通しでは、南極のオゾンホールは2066年ころまでに破壊される前の水準まで回復すると予測されています(国連環境計画(UNEP)などの報告による)。また地球全体で見ても、2050年代半ばには1980年頃の水準に戻るといわれています。回復傾向にあるオゾン層が再び失われることのないよう、冷蔵庫やエアコンを廃棄する際は適切な処理を行い、新しく購入する際はノンフロン製品を選ぶようにするなど環境に配慮した行動をとるようにしましょう。
関連ニュース

環境ニュース(国内)
環境省(MOE) 地球環境保全、公害防止、自然保護──日本の環境活動を先導する行政機関
https://econews.jp/news/domestic/10/
まとめ

日本では1988年に「オゾン層保護法」が制定されており、フロンが使用されている製品などの廃棄は「フロン排出抑制法」、「家電リサイクル法」および「自動車リサイクル法」に基づいて回収・処理することが義務付けられています。これによりフロン(現在使われているのはおもに代替フロン)が適切に回収され、大気中への漏えい防止につながります。
11月3日の「オゾンの日」のほかにも、モントリオール議定書が制定された9月16日にちなんで9月に「オゾン層保護対策推進月間」(環境省)があるなど、オゾン層の保護やフロン対策に関するさまざまな普及啓発活動が行われています。普段はなかなか意識することがないかもしれませんが、家電を買い替える際などに間違った処理をしてしまわないよう、このような機会にぜひ知って、覚えておきたいですね。
関連動画
冷蔵・冷凍庫業の会社の省エネはこちら!
【第62回】東大阪冷蔵株式会社






















































