• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

人を元気に、地球を元気に #42/株式会社 スーパーホテル

 「環境活動を進めていくと、最初にその地を訪れたときより、行き交う人々の表情が明るくなっていると感じました。環境がよくなると街が元気になる。その変化を目の当たりにした瞬間だった」と、全国に170棟超のビジネスホテルを展開するスーパーホテルの取締役会長・山本梁介さんは語る。
 きっかけは2001年、出店先の熊本県水俣市が独自に制定する旅館・ホテル向けの環境ISOを取得したこと。同市ではかつての公害を受け「環境都市」として各種改善を図ってきた。市の協力要請に応じ、ごみの分別をはじめとする環境活動に企業として取り組むうちに人々の表情の変化に気づいた。
 出店先の街が元気になれば、経済も回り、そこで働く人も元気になる。ホテル経営を通じて「地域の応援団」を目指す山本さんは企業経営と環境活動を通じ「人を元気に、地球を元気に」することを心に決めた。
 地産地消・地域連携の取り組みはこの体験を経て具現化していった。内容は各店で異なるが、社員教育を通じて従業員には環境意識が浸透し、自発的な取り組みが生まれている。
 最近では大阪市で運営している湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉の取り組みが「大阪府CO2森林吸収量・木材固定量認証制度」に認定された。脱炭素社会の実現に向け、地元産の木材を使用することで樹木が吸収した二酸化炭素(CO2)を大気に排出せず固定させる。それを大阪府が認証するものだ。同店ではリニューアルに伴い1階ロビーの内装を木質化し、そこに河内長野産のヒノキ1.43m3を使用した。それがCO2で1.1tの木材固定に認められた。

今年2月にリニューアルオープンした湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉。ヒノキ材のフレームをふんだんに使用したロビー。

 ただし、認証の取得が目的ではなく、あくまでこれまでの延長線上の取り組みだ。サステナビリティ推進室係長の迫田耕太郎さんは「リニューアルに当たり各店舗で行ってきた地元木材の活用を、ここでも実施したいとの相談を同店支配人から受け、認証制度を知りました。これまではCO2固定量の算出など考えたことはなかったのですが、今後各自治体でも同様の認証制度が広がっていくと予想され、取り組みの裏づけにもなると思い、申請を進めました」と話す。
 計画書の提出や数値換算など慣れないことが多く苦心したが、専門家の助けを得ながら対応した。その経験を生かし、他店舗でも着手しやすい活動を検討していく。例えば、大浴場の椅子や桶を木質化している店舗では年に1度それを入れ替えるため、原材料を認定木材に切り替えるなどだ。
 「地域連携」の例でいえば、石川県能美市への出店がある。この地は、名所や名産品はあるものの金沢と小松空港の間という立地のためかホテルが少ない。自治体は「町おこしにはホテルが必要」と考え同社に要請。それに応える形で2021年に出店した。特産である九谷焼を前面に押し出し、地域の魅力をPRできる内装やコンテンツを用意した。自治体や市民団体と協力したイベントも実施し、地域社会に深く根づく経営を成功させている。

特産品のPRに成功している「スーパーホテル石川・能美根上スマートインター」。

 こうした事例は全国の店舗で共有する。地域によってニーズや課題は異なるが、よいものは各店舗でも取り入れられるよう本部側から支援している。
 「1社でできることには限りがあります」と山本さんは言う。だからこそ自治体、地域社会、地元企業と協力し合っていくことが大切だ。同社は今後も各種取り組みを通じ、宿泊客にも地域にもやさしい持続可能なホテル経営を続けていく。


こぼれ話

 ビジネスパーソンの強い味方!スーパーホテルさんにお世話になっている出張者の皆さんは多いことと思います。かく言う私も、快眠とおいしい朝食を目当てに頻繁に利用させていただいています。今回は日頃の御礼もお伝えしたく、取材担当に立候補しました。さすがに宿泊の際にフロントでスーパーホテル愛を語るわけにもいかないので(笑)、直接お伝えできてよかったです。
 そんな私のように、スーパーホテルさんはファンが多いのも一つの特長。ファンミーティングを開催すると、交通費など自己負担であるにもかかわらず全国からたくさんの応募があるのだとか!確かに、足しげく通うファンにとっては、魅力の裏側について深く知ることができるチャンス。私もこまめにSNSなどチェックして、次回募集の際には応募してみようと思います。
 スーパーホテルさんが「宿泊業唯一のエコ・ファースト企業」たる所以だなと思う点は、宿泊者に対してきちんとSDGsへの取り組みが伝わっていることと、それがまったくもって宿泊者に負担を強いるものではないということ。特にビジネスホテルであるため、宿泊者の多くは仕事ですでに疲れています。エコに協力したいと思っていても、ホテル側からの提示が分かりにくかったり、面倒に感じられたりしてはアクションを起こそうとは思えなくなってしまうのです。その点をスーパーホテルさんはとてもスムーズかつノンストレスに宿泊に組み込んでくださるので、宿泊者としても「エコに協力した!」と気持ちよく帰ることができます。これを繰り返すと、私のようにすっかりファンになってしまう訳です。
 消費者個人にエコ意識を芽生えさせるスーパーホテルさんの取り組み。非常に価値あるものだと実感できたので、今後の動向も楽しみにしたいと思います。


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