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  • 企業活性化教育研究所の長尾光雄所長が、企業研修時に経験した「自利利他」にまつわるエピソードを紹介。環境市場新聞創刊時から連載する人気コラム

人のためになす行為が運や力をもたらす

自利利他(じりりた)-5-

 問題は常に起こる。それにどう対処するかによって仕事も人生も変わっていく。何があっても「良かったこと」と肯定思考で対処する人に運は向く。あの問題が起こったから自分はこうなったというような被害者意識や否定思考では、運は遠のく。自分を良くするのも駄目にするのも自分自身の考え方で決まる。
 運をつかむには、「世のため、人のために役立つ」という視点が大事だ。ユダヤ教の聖典『タルムード』にも「自分の為に行った時はささやかな運しかとれないが、他人の為に行った時はすべての運が協力する」とある。
 インド独立の父ガンジーは、意志が強く困難にもくじけず国の独立を勝ち取ったイメージがある。だが実像は、中年になるまで偉人の片鱗すら感じられなかったようだ。弁護士として初めて法廷に立ったときには、緊張のあまり話す内容を忘れてしまい、そのまま退室、人の集まる場で話すのが苦手で、外出の際はできるだけ人を避けていたという。それが、南アフリカに仕事で赴いたときの体験で変わった。当時の南アフリカは人種差別がひどく、屈辱的な体験をした。その異国での体験で皆のために差別をなくすという強い信念を持った人物に変わった。おどおどした弱い人間が自分のためより人のために働くことで信じられないような大きな力を出したのだ。
 例えばセールスでも相手の利を考えて行えば、「買ってほしい」と頼まずとも商談が成立する。基本に考えるのは、受け取ることではなく、何かを与えることだ。
 アイリスオーヤマでは社員に「ユーザーイン」(常に相手の立場にたって考えよ)という哲学を掲げ企業理念を繰り返し暗唱。結果、東日本大震災で本部と連絡が取れないときに個人の判断で手持ちの現金がない人へ名前を書いてもらうだけで商品を渡したり、灯油無料配布をしたりと、臨機応変の対応ができ、大きな顧客満足を勝ち得たそうだ。自利利他である。

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