江戸の暖はこたつ、火鉢、いろり
1年で最も冷え込むこの時季。だが江戸時代はもっと寒かった。気温が今より低い小氷河期と呼ぶ説もあり、冬の江戸では寒波で隅田川が凍ったという記録もある。江戸の人々は寒さをどう乗り切ったのか、当時の暖房事情を見ていこう。
江戸
今のように電気やガスのない時代。人々は主に薪や木炭を燃やし暖をとっていた。火事の危険から火の取り扱いが厳しい江戸の街では、火鉢やこたつが一般的な暖房器具だった。
火鉢は丸型や箱型で、豪華な装飾のついたものが遊郭を中心に使われた。庶民は狭い江戸の長屋に合った収納用の引き出しがある箱型の長火鉢をよく使った。五徳を置き、湯を沸かしたり餅を焼いたりとちょっとした調理もできる便利なアイテムだったようだ。
今もなじみのあるこたつは、床につくった炉に、やぐらをのせ布団をかぶせていた。当時普及した木綿によって綿入りのこたつ布団も広がったといわれる。
だが燃料の木炭は非常に高価だった。使われるのは主に江戸城や武家屋敷、遊郭や料亭など。庶民は木炭の破片やくずを集め、つなぎと混ぜて団子状に丸め乾燥させた、いわばリサイクル燃料のたどんを主に使用した。火力は木炭に劣るものの、火持ちがよく優しいぬくもりがある。
一方で、薄着を「粋」とする江戸庶民の意識もあり現代のような重ね着はあまりせず羽織に裸足で歩く江戸っ子も多かったようだ。
また、市中の狭い長屋ではなく農村部の家では、床に設けた炉に灰を敷き詰め薪を燃やすいろりが一般的で、炊事や夜間の照明としても利用した。暖かく乾燥した空気が屋内に循環し木材を腐食から守る働きや、煙に含まれるタールが梁や屋根につくことで防虫・防水効果もあるとされる。
現代
現代も使われるこたつは、省エネに優れた暖房器具だ。しかし、そんなこたつや火鉢で部分的に暖をとっていた江戸時代から一変し、今はボタンひとつで部屋全体が暖まる。
ならば、ひと時でも足元のヒーターだけを頼りに過ごしてみる。江戸庶民の暮らしがかすかに思い浮かぶかもしれない。それを今の時代の「粋」としよう。
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