• サステナブルノート
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電力需要急増! 節電・節ガスの上手な取り組み方

猛暑で電力不足懸念

8月に入り、まだまだ暑い日が続き、電力需要も増えています。東京電力管内では、1日から3日の電力需要が東日本大震災以降12年ぶりに最大を記録しました。
この夏は猛暑にくわえ、3月に発生した福島県沖地震の影響で停止した火力発電所の復旧の遅れなどにより、厳しい電力需給状況が続いています。電力供給予備率は電力需給ひっ迫注意報が出された6月ほどではありませんが、それに近い数値も出ています。政府から出された節電要請も7月~9月末までが期間となります。
くわえて、経済産業省では都市ガスの需給がひっ迫した場合に備え、ガスの消費を抑える「節ガス」を家庭や企業に要請する仕組みの検討にも入っています。

節電・節ガス、何ができる?

今回のコラムでは、「節電」「節ガス」に向けて、企業が実際に取り組む省エネ事例をいくつかご紹介します。製造業・宿泊業・飲食業・またオフィス全般でできる取り組みです。ぜひ自社の事業場形態に合った取り組みを、実践してみてください。

◇ 製造業の節電事例

消費電力の高い機器を中心に、効果的な省エネを

滋賀県にあるバネ・金属部品の製造工場では省エネ診断を行い、電力消費の多い機器を3つに絞り節電・省エネに取り組んでいます。まず着目したのはバネの耐久性を高めるために熱処理を行うテンパー炉(電気炉)。炉の温度は400度まで上昇させる必要があり、このときにデマンド値が上昇し、電力ピークを記録します。これまでは大型2台、小型2台を一斉に稼働させていましたが、これを大型1台と小型2台を最初に立ち上げ、1時間後に大型1台を稼働させるようにしたことで、電力ピークを抑制することができました。
また工場にあるコンプレッサーはエア漏れのチェックが欠かせません。エア漏れしている部分があると必要以上にコンプレッサーが稼働してしまいます。そこで業務が終了した夕方以降、静かな工場でコンプレッサーを稼働させ、音を頼りにエア漏れしている箇所を特定しメンテナンスを行います。こうした取り組みが安定的な生産と節電・省エネを両立させています。

電気料金低減のカギ!「電力ピーク」とは?
電力ピークとは一日のうちで最も電力使用量の高い30分間の値。電気を多く使う工場など(高圧契約の場合)では、この値で1年間の電気代のもとになる基本料金が決まります。

◇ 宿泊業の節電事例

くつろぎの空間でもできる無理のない節電・省エネ

千葉県鴨川市にある温泉宿では、お客さまにくつろぎの空間を提供したいという思いから、「省エネは難しい」と考えていました。しかし、SMARTMETER ERIA(以下、ERIA)を導入して電気の「見える化」をしたところ、節電・省エネ活動に成功しました。ERIAの数値を確認してみると、デマンド値(電力ピーク)が冬場の朝7時前後に最も高くなることがわかりました。
そこで同宿では、朝の電気の使い方を見直し。浴場のお湯を賄う灯油ボイラは、お客さまの起きる時間に合わせて6時から8時半まで集中的に稼働させていましたが、30分前倒しし、5時半からとしました。お客さまが動き出す前にお湯を温めることで、ボイラ稼働にともなって動くポンプなどの機器にかかる電気使用が抑えられるようになりました。 このほかにも、冷蔵庫の稼働台数の調整など、年間を通した取り組みも行い、おもてなしと節電・省エネ活動を並行させています。

◇ オフィス全般でできる節電事例

定期的な会議開催で、節電・省エネ意識を継続させる

福岡県にある住宅メーカーでは週に1度のペースで節電・省エネ、業務改善などを話し合う会議が開かれています。たとえば社内に10台以上あるエアコンは一斉にすべてつけるのではなく、数台ずつ時間差でつけることで電力ピークを抑えることができます。またスイッチ部分に冷房・暖房それぞれの目安温度を貼って、利用者に伝えています。また、以前はノートパソコンの電源をつけっぱなしにしたまま帰ってしまう人も多かったのですが、電源をスイッチ式のコンセントに変えて、スイッチの部分に一人ひとりの名前をつけたことで、帰るときだけでなく、使用していないときもこまめに消す習慣がつきました。
また同社では定期的に外部の研修会に参加して、業務改善や省エネに関する知識を習得しています。研修会の内容を参加者から全社員に落とし込んでいくことで、一人ひとりの知識を高めることができます。

◇ 製造業の節ガス事例

アルミ加工の効率化でガス使用量低減

静岡県にあるアルミ加工の工場では、節ガス対策のためアルミ加工で使用するプレス機の放射熱を防ぐ保温シートを取り付けました。500度近い温度を必要とするアルミ加工の作業は、機械の周囲も非常に高温になります。これを保温シートで覆うことで、周囲の温度は約20度もの違いが出るといいます。当然、プレス機内の熱も逃がさないので、ガス燃料の使用量も低減できました。
また同社ではコンピュータによるデータ解析で、一度に熱処理作業できる個数や時間を割り出しています。熱処理は冷蔵庫と同じで、あまり詰め込みすぎると必要以上に時間を要してしまい、少なすぎても個々の熱伝導のバランスが悪くなってしまいます。データ解析により適切な量を導き出すことで、時間の短縮ばかりでなく不良品の数も減っていきました。

◇ 飲食業の節ガス事例 ◇

ラーメン店が取り組む節ガスの工夫

栃木県にあるラーメンチェーン店では、ラーメンづくりに欠かせないガスコンロなどの使い方を工夫することで節ガスを実現しました。節ガス・省エネに取り組み始めたきっかけは、原油価格高騰によるガス代の値上りでした。まずは現状を把握しようと、ラーメン1杯をつくるのにかかるガスの使用量を算出。これをもとにどんなことができるのかをスタッフ全員で考えていきました。
これまでお客さまをお待たせしないためにと、常に点火していた茹で麺機や餃子焼き器は点火する時間を細かく区切って使用。お客さまが少ない時間帯には、スープを入れている大鍋も火を消して小さなポットに必要量だけを移して、小型バーナーで温めるよう変更しました。こうした日々の細かな対策により節ガス・省エネに取り組み、以前と比べてガス代約15%の低減に成功しました。

冬の節電ポイント、早くも始動!?

さまざまな企業が自社の事業形態に合った「節電」「節ガス」に取り組んでいますね。業種は違っても、参考になる取り組みがあったのではないでしょうか。

とはいえ、夏場の省エネは、冷房などを適切に活用し、水分補給などを行いながら無理のない範囲で取り組むことが大切です。

また少し気の早い話ですが、8月3日に経済産業省より、今冬の節電に協力する家庭や企業に対しポイントを付与する支援策を実施することが発表されました。電力の小売事業者が実施する節電プログラムに参加することで、家庭では2000円相当、企業では20万円相当のポイントを受け取ることができるというものです。

「節電」「節ガス」には、季節や温度に合わせた取り組み、また長期的な視点で対策を考えていくことも必要になりそうですね。無理なくできることからやっていきましょう。

【参考】
企業の省エネ成功事例(https://www.n-techno.org/
日本テクノのお客さまが取り組む省エネ活動を多数掲載しています。業種・エリア・事業規模で検索できるので、ご自身の事業場の状況にあった事例をご覧いただけます。

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