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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

「社長、やめちゃダメだ」 支援者の後押しで復興決意Scene 39

工場には高さ3.5mの洪水

平成30年7月豪雨で河川が氾濫、51人の死者が出た岡山県倉敷市真備町。今なお空き家の目立つこの地域で、復興に向け事業を再開したのが株式会社 山陽化成だ。発泡ポリエチレン・ウレタン資材などの製造販売を行っており、社員は16人。工場に隣接する社宅在住の3人をはじめ全社員が無事だったが、工場には3.5mもの洪水が押し寄せ、工場1階の全加工機械類が水没。倉庫にあった原材料や完成品はすべて破棄する事態となった。

洪水の高さは3.5m、工場の1階がほとんど水没した。(社宅屋上に避難した社員が撮影)

「想像を超える被害でした。町内は今も避難している方が多く、隣の建設会社はいまだ再建のめどが立っていません。当社は年商2億円の企業ですが、洪水の被害はその倍以上の5億円ほど。幸い7年前にタイに進出し、一部の生産ラインを移管していたため、生産ラインがすべてストップする状況だけは避けられました。しかし今の工場稼働率は被災前の4〜5割程度。復興には時間がかかると思います」(代表取締役社長の城戸英明さん)
「被災前日は、新入社員受け入れのため社宅を掃除し、工場には新設の焼却炉を仮置きしたところだったんです。被災後は、工場を片づけ、泥を洗い流すことから始めました。原料の廃棄量はダンプカー約200杯分にもなりました」(営業部長の磯田晃さん)
電力は非常用発電機で賄っていたが今年2月からキュービクルでの高圧受電を再開した。その復興を電気管理技術者として支えたのが日本テクノ協力会・日電協の穐田(あきた)彰次さんだ。「洪水から3日目に訪問したときはあまりの惨状に言葉を失いました。しかし城戸社長は事業再開を決め”電気面のことはあなたに任せる”と言ってくれた。なんとか修理できた機械、新調して入れ替えた機械などが稼働し、徐々にに事業が元通りになっていく中で、電気についての助言をさせてもらいました」。
城戸さんが復興を決意したのは支援者の存在があったから。「取引先やお客様が泥のかきだしを手伝ってくれました。皆が心配そうに”社長、やめちゃダメだ””お願いだから続けて、応援するから”と激励をいただいた。いまだに当社からの出荷を待ってくれているお客様もいます。そうした存在があり、復興に取り組む覚悟を決めたんです」。
支援してくれる人たちのため。道のりは険しいが少しずつ歩みを進めている。

力を合わせて必ず復興を果たしますと決意を語る。
(左から穐田さん、城戸さん、磯田さん)

こぼれ話

技術者さんの車に同乗し、被災地にたどり着くと、家財道具のないガランとした空き家が何軒もあり(写真左)、その被害のすさまじさに愕然としました。
「夜になるとあたりは真っ暗ですよ」と穐田さんは教えてくれました。
被災後は泥水まみれで使えなくなった家財道具や事業所の品々を運ぶ車で一帯は常に渋滞していたそうです(写真右)。
「やめようかと何度も思いました。でも、お客さまや取引先が口々に励ましてくれたんです。それでもう一度やろうと言う決意が生まれたんです」(城戸社長)
完全復興への道のりは遠いですが、山陽化成の皆さんは力を合わせ、前を向いて業務に取り組んでいます。

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