• ゼロカーボンシティ自治体の挑戦
  • パリ協定での日本の中期目標は2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減することである。この達成に向け国内各地の自治体が「ゼロカーボンシティ」を宣言し、行動を始めている。

【第1回】挑戦を続け「いま」を築く/埼玉県秩父市

環境立市推進課の
牛木克輔さん。

 秩父市は埼玉県で最も広い約578平方kmの面積を有し、約87%を森林が占めている。人口は1960年代に約8万人を記録し、現在は約6万人。2007年には「秩父市地球温暖化対策実行計画」を策定。市全体で省エネや燃費向上の取り組みなど人の工夫でできる対策を行う一方、地域特色を生かし産業振興も合わせて進めるべく、多様な対策を行ってきた。
 例えば「バイオマス発電」。豊富な森林資源を生かし間伐材などを有効活用しようと考えた市は、レクリエーション施設「吉田元気村」の電気をこれで賄うべく、2007年より発電を開始した。
 「しかし本格的な取り組みを始めるといろいろな課題が見えてきました。バイオマス発電は急峻な林地の多い秩父では間伐材を集める行為そのものに手間とコストがかかることがわかりました。その後設備で火災が発生したことから今は発電を中止しています」(秩父市役所環境立市推進課主幹の牛木克輔さん)
 地場産業の面でも変化があった。1990年代から市内のセメント工場が徐々に規模を縮小し、2010年には普通セメントの生産が中止された。「温暖化対策実行計画策定当時の秩父市の温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO2)換算で103万7400トンでしたが2016年度は48万6700トンになりました。数字だけ見れば大きな成果のようですが、これには工場の縮小による排出量減少が大きく影響しています。地域の発展には持続可能な産業が不可欠で、環境面で進展があったとはいえ手放しでは喜べません」。
 その後も市の施設「歴史文化伝承館」に太陽光発電パネルを設置する(写真)など温室効果ガス削減に取り組む中で、さらに地産の再生可能エネルギー(再エネ)電源を活用するため、市が95%出資する秩父新電力株式会社を立ち上げた。同社が供給する電力は秩父広域市町村圏組合が所有する清掃工場「秩父クリーンセンター」で発電される電力や、民間の太陽光発電施設などの再エネを活用している。CO2排出係数が比較的低いこの電力を使用することで市の温室効果ガス排出量を大きく削減できた。新電力会社の活用による排出量削減に手応えを得て、市は2019年にゼロカーボンシティの実現に取り組むことを宣言した。

市施設「歴史文化伝承館」の太陽光パネル。


 「試行錯誤を続け環境保護の姿勢を貫いてきた結果、さまざまなノウハウが蓄積され、それが新電力会社を生む下地になりました。新産業の創出という意味ではまだ前途多難ですが、環境施策と結びつけながらこれからも地域の振興に資するような取り組みを進めたいと考えています」。
こぼれ話

本連載を開始するにあたって、決めていたことがあります。それは「自治体が抱える個別の問題解決とゼロカーボンシティをいかにして両立させるのかを伝える」ことでした。
21世紀の日本の自治体は高齢化や人口減少、それらに伴う多くの問題を抱え、難しいかじ取りを迫れられます。他方で人口減少は温暖化ガス排出減にとってはプラス要因であり、自治体の繁栄とゼロカーボンの取り組みは一見二律背反にも見えます。その点をどう考え、乗り越えようとしているのかを本連載では伝えたいと考えています。
その点、牛木様は秩父市の状況について丁寧にいろいろな側面からご説明くださいました。セメント産業が撤退し、温暖化ガス排出量は減っても財政的には苦しかったこと、豊富な森林資源を活用しようと考えても結局バイオマス火力はコスト的に合わなかったことなど、失敗も乗り越えた上で今があるというお話は非常に納得いくものでした。

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