和紙に油を引いた江戸の傘
梅雨から台風シーズンと傘の出番が増えるこの時期。江戸の時代には頭に被る笠から手に持つ傘が庶民にも定着していき、雨の日は傘を持った人々で通りは賑わった。江戸の街ではどんな傘が使われていたのだろうか。
江戸
使われていたのは和傘。和傘は竹や木、糸でつくった骨に和紙を張り、そこに水をはじくための油を引いてつくられた傘の総称だ。町人文化が花開いた江戸の頃になると、被り笠では髪形を崩してしまうと女性を中心に手に持って差す和傘が人気を集めていった。
和傘にも種類がいくつかある。「番傘」は丈夫だが粗雑なつくり。当時、雨が降ったときに商家が店の名前の入った傘を客や通行人に無料で貸し出すサービスがあった。町を歩く人々に広告宣伝をしてもらい、返却のためにまた店へ足を運んでもらえる。この傘に店の屋号や番号が入っていたため番傘と呼ばれるようになったという説がある。「蛇の目傘」は基本色の上に白い輪が広がり、傘を開いたときにヘビの目に見えることから名づけられた。番傘に比べ細く、値段は高いがファッショントレンドに敏感な町人を中心に人気を博したようだ。
油を引いているとはいえ紙でできている和傘は使っているうちに破れてしまう。そこに古傘買いや、古骨買いと呼ばれる商人がやってきて壊れた傘を買い取っていた。買い取られた傘は骨と油紙に分解され、また新しく紙を張られ次の傘へと生まれ変わる。
破れてしまった油紙も耐水性は残っているので味噌や肉を包むために再利用されていたという。江戸時代のリサイクル文化は万事に徹底されていた。
現代
現代では傘の素材や種類も多様化している。1人当たりの傘の所持数は世界平均で2.4本。対して日本は3.3本。降水量が多いうえに湿度が高く、一度濡れると乾きにくいことが関係しているようだ。
ただし、近年では日本人の年間の購入本数は減少気味で、同時に傘１本当たりの購入金額は上昇傾向にあるというデータもある。よいものを長く大切に使いたいという人が増えていると考えられる。江戸庶民のような張り替えて使う和傘が無理なら、せめて長く使える1本を見つけるのがいいかもしれない。資源の節約にもつながり、何より気に入った色や柄の傘は雨天でも気分が上がる。
