貸本業の繁盛、高い識字率のおかげ
以前、この欄で江戸のレンタル業(損料屋)について触れた。今回は同じレンタルでも、江戸に暮らす人々の娯楽の1つ「本」を扱う貸本屋を紹介する。
江戸
江戸時代の日本は当時の他国より識字率が高かったといわれている。
江戸以前の世の中では、書物というと役人の書類や和歌集・物語など文学作品が中心。その後、今でいう絵本のような娯楽書が庶民の間でブームとなり、皆が楽しめる書物が多く出版されるようになった。
そのブームを後押ししたのが庶民の識字率の高さだ。当時のイギリスでも1割ほどと見られていた識字率。それが江戸では6割を超えていたといわれる。江戸庶民は、寺子屋で教育を受けるのが一般的で、男女を問わず多くの人が文字を読み書きできたからだ。
ただ、当時は現代のような機械生産の印刷技術はなく、一冊一冊手づくりになるため本は高価だった。そこで見料だけで楽しめる貸本屋が多く利用された。初めは風呂敷に書物を包んで行商のように貸し歩くのが中心だったが、やがて店で客を待つ貸本屋も増えた。庶民、商人、武士と身分に関係なくさまざまな人が読書を楽しんだという。
令和
これまでこの欄で紹介してきたような限られた資源を有効利用する江戸の「エコな営み」に対し、令和の生活はどちらかといえば無駄の多い浪費的な「営み」だった。だが、書物に関する現在の環境負荷は、江戸のそれよりも小さいといえるかもしれない。情報化技術が進みデジタルコンテンツが利用できるからだ。
江戸の書物は手づくりとはいえ、紙やとじ糸などの資源を使う。対してデジタルは物理的な資源は必要なく、増刷も瞬時のコピーで済ませられる。それに、漫画や小説もデジタルコンテンツとしてインターネットを介して配信され、どこにいても購入またはレンタルして楽しめる。
このコーナーは今号の掲載で10回目になった。いつも江戸に押され気味だった令和のエコの度合いも2桁目でやっと少し挽回できた気がする。とはいえ、紙の書物も残しておきたいが。
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