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特集/電気主任技術者とは――役割、業務内容、丸ごと解説します!

事業活動に欠かせない電気。冬の寒い時期、とくに宿泊施設や店舗では暖房の使用が不可欠です。また食料品を取り扱う業種では、1年を通して冷凍・冷蔵庫が電気使用量の多くを占めています。

これらたくさんの電気を使う設備の安全を維持・管理していくために欠かせない「電気主任技術者」の仕事。今回は電気主任技術者の役割やその業務内容を詳しくご紹介します。



【目次】
電気主任技術者とは
電気主任技術者の種類
電気主任技術者の業務内容
電気主任技術者になるには
電気主任技術者の現状と課題

電気主任技術者とは

企業が電気を使用するにあたって、50kW以上の電気を必要とする工場や店舗、オフィスなどでは電力会社(小売電気事業者)と「高圧受電契約」(2,000kW以上は「特別高圧受電契約」)を結んでいます。
高圧・特別高圧の事業場では、電気を安全に使うため、定期的な電気設備の点検が法律で義務付けられており、それら電気設備の保安監督を行うのが電気主任技術者と呼ばれる人たちです。

少し専門的な説明をすると、電気主任技術者が管理をする電気設備は「電気工作物」といわれます。発電、送電などを行う電気事業者がもつ発電所、送電線路などの設備から、それを受電して使用する工場や店舗などの需要設備まで、広く電気にかかわる設備を電気工作物といい、その目的や規模によってさらに分類されています。
電気主任技術者はこの電気工作物の保安監督を行うための国家資格。国家資格をもった電気主任技術者でなければ電気設備の管理は行うことができません。
日本全国で高圧・特別高圧の契約を結び電気工作物を所有している事業者の数は約85万件にものぼります。電気主任技術者は、この膨大な数の事業にかかわる重要な役割を担っているのです。

             電気工作物の種類とその分類

◆◆電気主任技術者が保安監督するキュービクルとは◆◆
電気主任技術者が保安監督をする「電気工作物」のなかでも、比較的身近な設備が、高圧受変電設備(キュービクルなど)。工場や店舗の駐車場などに設置されている白いボックス型の設備で、高圧受電の事業場にとってはなくてはならない設備です。


通常、低圧受電契約を結ぶ一般家庭などでは、発電所から送られてくる電気は電力会社の変圧設備によって、使いやすい100Vや200Vに降圧されたものを受電します。一方で高圧の事業場では、6,600Vの高圧電気をそのままキュービクルに引き込み、キュービクル内で100Vや200Vに降圧してから使用します。いわば小さな変電所。高圧の事業場では、企業ごとにこの設備を管理する必要があり、これを電気主任技術者が担っているのです。
設置者となる事業者は保安規程を設けたうえで、設備の保安監督をする電気主任技術者を雇用します。またさまざまな理由で電気主任技術者を雇用できない場合は、社外の電気主任技術者に保安点検を依頼する「外部委託承認制度」という制度も設けられています。

電気主任技術者の種類

電気主任技術者の資格には、免状の種類によって第一種、第二種、第三種の3種類があり、これによって保安監督のできる設備が変わってきます。第一種はすべての電気工作物を見ることができますが、第二種は電圧が17万V未満のもの、第三種は電圧が5万V未満のものと限られます。

第一種電気主任技術者
すべての電気工作物を保安監督することができる。
例:大手電力会社が保有する送電線や変電所、大型の火力発電所など

第二種電気主任技術者
電圧17万V未満の電気工作物を保安監督することができる。
例:大規模な工場や2000kW以上の太陽光発電所など

第三種電気主任技術者
電圧5万V未満の電気工作物を保安監督することができる。
例:ビルや工場、コンビニエンスストア、50kW以上の太陽光発電所など

電気主任技術者の業務内容

電気主任技術者の役割としては、電気事業法に基づき「電気工作物の工事・維持および運用のための保安の監督」を行うことが上げられます。具体的には下記の3点が主な業務です。

■電気工作物の保安点検
電気主任技術者の代表的な業務のひとつです。電気工作物には安全性の確保のために、法律により定められた頻度での保安点検が義務付けられています。電圧・電力などの測定を行う月次点検。年に1回(場合によって点検ペースは異なる)、電気設備を停電させて各装置の動作確認などを行う大規模な年次点検などがあります。

■電気工作物の事故対応
予期せぬ設備の故障や停電などの電気事故があった際にも点検を行います。故障・停電などの原因を突き止めて、設備の規模や事故の内容によっては、修理作業を電気工事士などに依頼する場合もあります。

■電気工事の監督
500kW以上の設備では、電気工事士などによる電気工事を行うにあたり、電気主任技術者の監督が必要です。電気主任技術者は工事全体の流れを把握し、作業員への指示や進捗管理などの業務を行います。

電気主任技術者になるには

電気主任技術者の資格を取得するには、①試験合格②認定取得の2つの方法があります。
試験は第一種から第三種まで、その種類によって内容が異なり、第一種と第二種については一次試験合格後に二次試験を受ける必要があります。ただし、一次試験の各科目は科目ごとに合否が決まるので、一度にすべての科目を合格しなくても合格科目は次回の試験での免除対象となります。
また受験資格に規定はないので、年齢や性別など問わずに誰でも受験することが可能です。

 【電気主任技術者資格の試験科目】
 一次試験:理論、電力、機械、法規
      第一種、第二種、第三種ともに上記4科目
 二次試験:電力・管理、機械・制御
      第一種、第二種ともに上記2科目

一方、認定取得には実務経験が必要となります。経済産業省が定める認定校を卒業後に、一定の実務経験を積むことで試験を受けずに資格を取得することができます。また、たとえば第三種取得後に、一定の実務経験を積むことで第二種を取得するという方法もあります。
資格の種類によって、実務経験として必要な年数や認められる業種・規模などが変わってきますので、認定取得を考えるうえでは、その要件をしっかりと把握して計画的に実務を積み重ねることが大切です。

電気主任技術者の現状と課題

経済産業省の資料によると、日本の少子高齢化などの影響により、電気主任技術者の免状取得者数も直近10年とその前の10年で比較すると、第三種の取得者数で1割(約5,000人)以上減少しています(2021年時点)。再生可能エネルギーの導入拡大が進むなかで、今後はそれに関連する設備の増加がさらに見込まれます。もし新たな対策を講じない場合、2030年時点で第二種だけでも約1,000人の人員が不足する可能性があるのです。
こうした現状を受けて、国をあげての人材の育成や確保、また保安制度の改善に向けた検討が進められています。

 【電気主任技術者のさらなる活躍に向けた今後の取り組み案】
①効果的・効率的な保安の実現
 主任技術者のさらなる活躍に向けた制度の構築
 ・ 監督可能な事業場数等の柔軟化
 ・ 求められる経験年数の柔軟化
 ・ 受験機会のさらなる拡大
 保安と効率化を両立するデジタル技術の活用促進
 ・ 事業場等の点検頻度の見直し
 ・ 2時間以内で到達できる事業場などの柔軟化
 ・ スマート保安技術に関する情報収集・展開、表彰
②電気主任技術者の育成・確保
 働きやすい労務環境の実現へのさらなる取組
 ・ 業界内で連携した人材育成スキームの構築・強化
 ・ 労務環境のベストプラクティスの共有
 ・ 能力・業務実態に応じた適切な評価・賃金体系の実現
 電気保安業界への入職促進
 ・ 保安×IT・金融など、異業種連携による魅力の多様化・向上
 ・ 高校・大学等と連携した若年層への更なるアプローチ
 ・ 一層の社会的認知度・地位向上に向けた広報活動の強化
     (出典)経済産業省「電気主任技術者制度について」 令和5年3月31日より

事業活動に留まらず私たちの生活にもかかわる電気設備の安心・安全。それを守る電気主任技術者について知ることで、あらためて電気のある生活のありがたみを感じることができますね。政府による電気主任技術者拡大の取り組みについても、引き続き注目していきましょう。

【参考資料】
経済産業省「電気主任技術者制度について」令和5年3月31日
日本テクノの保安点検・新設 キュービクルと保安規程

▶日本テクノ協力会・日電協「電気主任技術者」募集!
https://www.n-techno.co.jp/recruit/tv-cm.html

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