カーボンニュートラル 脱炭素社会の目標実現に向け 一人ひとりができること
2020年10月に菅義偉首相は国会の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。これまでの80%削減ではなく温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標である。
これにはあらゆる産業での技術革新が必要だ。すでに水素還元製鉄、人工光合成、グリーン冷媒など多くの研究開発が進んでいる。
それと同時に必要なのが一人ひとりの意識や行動だろう。無駄づかいをしない省エネ活動を継続しながら、使用しなければならないエネルギーを少しでも環境負荷の少ないものに変えていく。そうした考え方に理解を示すのが脱炭素社会へ進む第一歩になる。
2050年に80%削減を目指す当初の計画では、2030年度時点の電源構成を再生可能エネルギー(再エネ)22〜24%、原子力20〜22%、火力全体56%にする目標を掲げていた。首相宣言の排出量実質ゼロを進めるにあたり見直される可能性もあるが、その場合も主力電源化に向け再エネ比率は拡大されるだろう。なお、2018年度の再エネ比率は17%で、今後着実に取り組みを進めれば当初の2030年度の目標は達成が見込まれている。そこに上積みが必要になるということだ。
ただ忘れてはならないのが電力の安定供給である。天候に左右される再エネを補完する役割の電源確保が必要だ。それは、出力調整が比較的容易な火力発電などの安定電源に頼ることになる。そのため、安定電源の存続費用を捻出する容量市場という仕組みなどがつくられ、脱炭素社会へ向けた取り組みを支えている。
比率を上げ再エネ主力電源化を進めるにあたり、当社が提唱するのが「上げのデマンドレスポンス」という電気の使い方である。通常のデマンドレスポンスは電気が足りなくなるとき使用を控えてもらうよう要請して需給のバランスをとる。それとは逆の方法で、発電が過剰になってしまうタイミングに、電気を多く使ってもらう。
前述の通り再エネは天候に左右される。特に導入量の多い太陽光は変動が顕著だ。電気の使用が少ない季節や時間帯に、晴天で発電量がピークになれば、過剰供給で電力網は支障をきたし、大規模停電になる恐れもある。それを避けるためたびたび出力制限もかかっている。そんなとき、適切に需要が増加すれば、再エネによる電気を無駄なく利用でき、再エネ発電設備導入拡大の気運も高められる。
太陽光などで供給が増えるタイミングでは、電力の卸売価格は下がる。当社の運営するサイト「環境市場(いちば)」では日々変動する卸売価格をグラフで見やすく表示している。それを見て、価格が安いとき(供給過剰なとき)に電気の使用を集中させるような取り組みに役立ててもらえたら、再エネの主力電源化や脱炭素社会への貢献につながると考えている。
未来を生きる子どもたちのために、今できることを大人が行う責任がある。首相の宣言にはそんな思いも込められているのだろう。電力会社によっては、環境負荷の低い電気を提供する料金プランや化石燃料を用いない電源であることを示す非化石証書付きのメニューなどを用意している。そうした種類の電気を選択するのも責任を果たす行為の1つに含まれる。
多くの分野での技術革新に期待を持ちつつ、省エネ活動の継続、環境負荷の少ないエネルギーの有効活用など一人ひとりの意識や行動を再度見直してみたい。
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