空港が環境と向き合う エコエアポートって知ってる?
12月17日は「飛行機の日」。1903年のこの日にライト兄弟が人類初の有人飛行に成功しました。それから120年余り、飛行機での移動は私たちの生活を便利にしてくれています。そしてその飛行機に乗るために必ず訪れるのが空港ですね。今回は旅行やビジネスなど空の移動に欠かせない空港が環境負荷低減に取り組む「エコエアポート」について紹介します。
エコエアポートとは?

日常生活や企業活動において環境への配慮をすることが当たり前になってきている現代社会。それは空港も例外ではありません。滑走路や駐機場、ターミナルなど広大な敷地を必要とする空港は周辺をとりまく環境と密接に係わる部分が多く、周辺地域の環境を良好な状態に保ち、守っていくための施策として国土交通省は2003年に国管理空港を対象とした「エコエアポート・ガイドライン」を策定しました。ガイドラインではエコエアポートを『空港及び空港周辺において、環境の保全及び良好な環境の創造を進める対策を実施している空港』と定義。空港周辺の空気や水、土などの自然環境や生物多様性、生態系の保護、省エネルギーや3Rの推進、地域交流など空港内外の多様な環境に目を向け共生していくために必要な事項を取りまとめています。
| 基本理念 ・環境に優しい空港(エコエアポート)、すなわち ①地球環境的視点に立った空港 ②地域環境と共生できる空港 ③低炭素社会・循環型社会・自然共生社会の形成に寄与する持続可能な空港 の実現を目指す。 ・このため、空港管理者および空港内事業者は、空港の活動において、環境基準等を遵守するのみならず、省エネルギーや3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進、生物の多様性に配慮した環境の創造等、積極的に多様な環境対策に取り組む。 ※エコエアポート・ガイドラインより引用 |
空港が抱える課題

2003年にガイドラインが策定されるまで、空港が周囲に与える影響は騒音被害を中心に対策が講じられてきました。そのおかげもあり騒音問題については90年代ごろまでに大きく改善されました。一方、世界的に見ると地球温暖化、資源・廃棄物問題、生物多様性の損失などの環境に関する多くの課題が提起されていました。燃料をはじめ大量のエネルギーを消費することによる大気汚染や、利用者の往来による廃棄物の発生や排水がもたらす水質汚染、森林の伐採など、空港の運営は周辺環境に対して多くの影響を及ぼしているのです。また、空港はその立地や地域、需要によって規模や特性が異なります。このガイドラインでは空港ごとに協議会を設立し、施策や目標設定を各々の特徴を考慮したうえで、判断、実行することとしていますが、日本は空港管理者とターミナルビルを運営する事業者が異なることが多く、複合化された運営体制の元、空港全体で環境保全への取り組みを進められるかがカギとなっています。
空港はどんなことをしているの?

各空港は空港管理者を中心として設置されたエコエアポート協議会のもと、空港を運営する事業者からなる空港環境部会が『空港環境計画』の原案を作成します。これは空港を運用するなかで発生する大気汚染や騒音・振動問題、省エネルギーやリサイクルなど達成すべき内容についてその空港の特性や中長期計画も鑑みながら年度目標と実施計画を規定したものです。関係者で自主的に取り組み、達成できる内容を基本とし、この原案をもとにエコエアポート協議会は空港環境計画を策定。原則として毎年度施策の実施状況を公表しなければならなりません。
具体的な取り組み

国内最大の利用者がある東京国際空港(以下、羽田空港)を例に具体的な取り組みを紹介します。羽田空港では、周りに高い建物がないという利点とターミナルの広い屋根を活かして太陽光パネルを設置し自家発電、消費することでCO2削減に貢献。また、大きな窓や天窓による自然採光で消費エネルギーを抑えながら効率的に空港内を明るくしています。ターミナル内の大きな窓ガラスは飛行機がよく見え、旅の気分が高まるだけでなく、省エネの効果もあったんですね。さらに、自然光を取り入れることによる室内温度の上昇に対応するため、ペアガラス(複層ガラス)を使用して冷・暖房効率を高めています。

駐機場ではターミナル間を移動するバスや作業車にハイブリッド車や電気自動車を導入することや、GPU利用の促進が挙げられます。GPUとは駐機中の航空機に電力や空調を供給する航空機動力設備(GPU:Ground Power Unit)のこと。航空機自体にも動力装置が搭載され、自力で電力と空調を供給することができますが、そのためにはエンジンを動かす必要があり、燃料を消費します。GPU、または車型の移動式GPUの利用によってCO2を含む排出ガスと消費燃料の削減、そして騒音の抑制につながります。
その他公共交通機関利用の利用促進など、向こう10年にわたって目標を立て取り組んでいます。
参考:東京国際空港ターミナル株式会社 私たちの取り組み エコエアポート
おわりに
島国である日本に住む私たちと航空機は切っても切り離せない関係にあり、空港を頻繁に利用する人も少なくありません。そんな空港では私たちに見えないところで各航空会社とインフラ、官公庁が一緒になって持続的な社会を実現できるよう努めています。近く空港を利用する予定のある方は本コラムの内容を意識して見てみると、いつもの空港がまた違った見え方になるかもしれませんね。
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