最上位目標は「高い生活の質」

第6次環境基本計画閣議決定 

 政府は環境政策の大もとになる環境基本計画を2024年5月、閣議決定した。計画の策定は環境基本法に定められており、1994年の第1次計画から30年目となる今回の見直しは、第6次に当たる。環境政策の最上位目標として掲げたのは「現在及び将来の国民一人一人のウェルビーイング/高い生活の質」を実現することだ。計画では冒頭で、現在直面している「気候変動」「生物多様性の損失」「汚染」という3つの危機を指摘する。人類の活動は地球の環境収容力(プラネタリー・バウンダリー)を超えつつあるとし、今行う選択や対策が数千年先まで影響を及ぼすことに言及。環境、経済、社会のすべてが「勝負の2030年」であると意識し、化石燃料など地下資源に依存する現代文明の転換や社会変革の必要性を示している。

 そうした現状を提示したうえで、最上位目標を「ウェルビーイング/高い生活の質」とした。環境政策を起点にして、経済や社会の課題も統合的に解決していくことで未来の世代も含めた全国民の幸福度を向上させる。そのためには「新たな成長」が必要で、そこには自然資本の維持・回復・充実や、これまであまり評価されていなかった環境価値の活用が欠かせないとしている。目指すべき社会の姿としたのは「循環共生型社会」。これを「環境収容力を守り環境の質を上げることによって成長・発展できる文明」と定義し、復元力を超えた資源の採取や温室効果ガスを含めた汚染物質の排出を改めることなどの「循環」と、人が生態系の健全な一員として暮らす「共生」で、経済社会システムを構築していくとした。

 そうした目標や目指す社会像など基本的な方向性を踏まえて示す重点戦略は、経済システム、国土、地域、暮らし、科学技術・イノベーション、国際の6分野。

 「経済システム」ではサステナブルファイナンスの推進、カーボンプライシング構想の実行、「国土」では劣化した生態系の再生、美しい景観の保全・創出、「暮らし」では熱中症対策、海洋ごみ対策、食品ロス削減といった細かな課題にも触れ、環境政策全体を網羅する方針を表した。

環境基本法
 環境保全の基本理念と関連する施策の基本事項を定めた法律。1993年に公布、施行された。
本法律は環境保全に関する施策の総合的な推進を図るため、政府に対し「環境基本計画」の策定を求めている。環境大臣が中央環境審議会の意見をもとに案を作成し閣議決定する。法の目的にある「健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献する」は、第6次計画の目標に通じる。

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