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「森」「紙」「水」のリサイクルで環境保全#31/王子ホールディングス 株式会社

 王子ホールディングスは、1873年に近代日本経済の祖・渋沢栄一氏が創業した「抄紙会社」をルーツとする日本最大手の製紙会社。東京・銀座に本社を置き、グループ従業員は3万6000人(2020年3月31日現在)を超える。
 渋沢氏は明治時代に著書『論語と算盤』で「道徳(倫理)と経営(利益)の統一」を主張するなど社会事業(今でいう「企業の社会的責任(CSR)」)の重要性を説いていた。つまりCSRの起源は設立時からのもの。その環境活動で重視するのが「森」「紙」「水」の3つのリサイクルだ。
    
 「森のリサイクル」は昭和初期からの取り組み。世間が環境問題に目を向けるはるか以前から森林資源のサステナビリティ(持続可能性)を重視し、森林経営を行っている。「木を使うものは木を植える義務がある」の思想を実践し、国内(約19万ヘクタール・大阪府の面積に相当)だけでく海外(約38万ヘクタール)にも植林事業地を広げ保有・管理している。2019年度末時点における累計の二酸化炭素(CO2)固定量(樹木などが光合成により吸収するCO2の量)は、1億3500万トンにも及び、日本人約1500万人分の年間排出量に相当する。
 2004年からは、所有する社有林などを活用して小学校高学年の子どもを対象にした体験型自然教育プログラム「王子の森・自然学校」も開催。森林の役割や管理の重要性などを次世代に伝えている。
 木材と並んで、製紙原料に古紙は欠かせないため「紙のリサイクル」にも注力している。2019年度の古紙利用率は業界平均の64.4%を上回り、65.6%に達した。2030年にはさらに高い70%以上を目標にしている。
 「水のリサイクル」を推し進めるのは、紙の製造には水が必要不可欠なため。工程内で使用している水は、汚れ具合に応じて無駄なく再利用する。水の使用後は浄化処理を行い、取水量の約95%を河川や海に戻している。環境負荷の軽減に向け、今後もグループ全体で水資源の有効利用と取水量の削減に取り組む計画だ。

2004年より「王子の森・自然学校」を開催し、
子どもたちに体験プログラムを通じて
森林の大切さなどを教えている。これまで約1200人が参加した。

 今後の展開について環境経営推進室長の田中良正さんは「経営理念の1つに〝環境・社会との共生〞を掲げています。事業と環境は切り離せないもの。私たちのコア事業は紙の製造ですが、その中で環境や生物多様性保全に役立つイノベーションを推進していきたい。例えば現在問題になっているプラスチックごみなどの解決を図る代替紙素材。さらにはバイオマスプラスチックなど木質由来の新素材開発を進め、持続可能な社会づくりに貢献していきます」と語る。革新技術の開発分野でも、その根底にあるのは「3つのリサイクル」を支える意志と同種のものだった。

こぼれ話

今回訪問した王子ホールディングスは、1873年の創業当時からCSR(企業の社会的責任)を意識していたのには驚きでした。創業者の渋沢栄一氏はあらためて凄い人物だなと感心させられました。また、王子グループは1910年代より森林資源のサステナビリティを重視し、森林経営を行っています。1970年代には海外でも植林事業を開始。現在では、海外6カ国9地域にも及んでいます。日本で環境問題への対応が叫ばれ始めたのが1990年代からですので、環境問題については先駆者といえるのではないでしょうか。

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