エネ消費実質ゼロすべてのビルに #45/大成建設 株式会社
国内外で建設業を中心に幅広い事業を展開する大成建設株式会社。2013年にグループの環境目標「TAESEI Green Target 2050」を策定。2022年からはサステナビリティ総本部を立ち上げリーディングカンパニーとして業界をけん引してきた。
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現と「森林資源・森林環境」「水資源・水環境」の課題解決を推進する取り組みのうち、建築分野から企業の脱炭素化を後押しする事業について、ZEB推進室室長の吉田典彦さんに話を聞いた。「建物は一度建てられたらそのほとんどは30年、50年と使い続けられます。これをZEB(ゼブ)化すれば長期間継続した二酸化炭素(CO2)削減になる。非常にポテンシャルの高い分野なのです」
ZEBとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略称。年間の一次エネルギー収支が正味ゼロになる(使うエネルギーを省エネと創エネで相殺し実質ゼロにする)建物をいう。2015年に正式に定義され、2021年の第6次エネルギー基本計画には、新築建物すべてにZEB基準の省エネ性能を持たせるという2030年目標が示され、さらに2050年にはその範囲を、既存を含むすべての建築物に広げる目標が掲げられた。
ZEB実現のための主な省エネの内容は①窓ガラスや壁、屋根の高断熱化②照明のLED化や人感・照度センサーによる出力制御③空調の高効率化――など。創エネは太陽光による発電など。これを自社ビルなどに採用すれば企業にとって環境配慮の姿勢をPRできるメリットがある。
ZEBの設計には建築・設備全般の検討が必要。既存建築物では建物の形や改修できない部分があるなどで検討のハードルが高くなる。また、設計時の図面が手元にないなど調査や診断の時点でつまずくことが多い。
同社では2030年目標を前倒しして2029年度には自社新築設計案件でのZEB化率100%を目標にしているが、2050年の既設を含むすべての建物でも「今から手を打たないと、国内の大半を占める既存建築物が置き去りになってしまう」と危機感を抱く。
その対策として開発したのが、既存建築物のZEB化を加速させる「ZEBリノベ@診断」だ。
まずは簡単に診断してみたいというニーズに応えるべく、蓄積した知見を最大限活用して、どれだけの省エネ改修ができるかスピーディに診断する。建物の改修時にこのサービスを利用すれば、より短期間で改修項目・方法の提案が可能になる。
これまで同社では、自社施設や顧客所有のビルなどの数多くをZEB基準に適合した設計で建築してきた。その成果は明確な数値で示されているが、やはり費用面や工事期間などに負担を感じる事業主も多いという。
「そこでおすすめしたいのはまずゼブレディから着手することです。それは創エネは行わず省エネの設備改修で50%以上のエネルギー消費量を削減するもの。それでもZEB認証は受けられるので、その後段階的に創エネを行い、次のニアリーゼブや最終的なZEBへと認証段階を引き上げていけばよいでしょう」
社会全体の脱炭素化に貢献する取り組みが顧客の状況を踏まえた活動によって続けられている。

こぼれ話
ZEBの正式な定義がされる以前から本事業に取り組んできた大成建設。今回その事業にかける想いを伺いましたが、このほかにも同社では環境に対する取り組みを幅広く行っています。すべてを紹介できず無念!建設の段階に応じた脱炭素技術の開発、CCS(CO2回収貯留技術)の開発、資源循環、建設発生土の再生、土壌や地下水の浄化。また、木質建築の推進や海の環境再生、森林整備活動など、枚挙にいとまがありません。個人的には、いずれ別のカテゴリも深掘りして取材したいところ…!
同社の「ネイチャーポジティブ」への取り組みが直に感じられる場所があります。それは東京都千代田区にある大手町タワー・大手町の森。都市の中に創出された森は、ビルの敷地面積の1/3を占めています。「この地に本来あるべき自然の、本当の森の創造」をめざしたというこの森は、ビジネス街において人々の安らぎの場となると同時に、ヒートアイランドの緩和、生態系への貢献といった効果を発揮しています。同社のキーフレーズでもある「人がいきいきとする環境を創造する」を体現している事業だとも感じました。一般の方も訪れることができる場所ですので、近くへ寄った際は木々のざわめきや小鳥のさえずりに耳を傾けてみではいかがでしょうか。























































