大発見の舞台裏で!ペロブスカイト太陽電池誕生秘話|エコブックス
曲がる太陽電池の開発経緯と仕組み
東京都は2024年3月、ペロブスカイト太陽電池の有効性実装検証事業を開始した。IoTセンサーに搭載して設置場所の温湿度などを計測し、発電性能や耐久性といった検証を行う。都庁ではこれを一般公開している。国も2030年の社会実装を目指し「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」で基金を割り当て、後押しを進める。
注目の新技術の発祥の地は日本。その中心人物が記したのが本書である。この成果によってノーベル賞候補とも目される研究者だ。
利点をまとめた箇所(9ページ)から一部だけ引用しても〈薄くて軽いフィルム状で、曲げたりフレキシブルな形にでき、設置場所を選ばない〉〈印刷技術を使って「塗って乾かす」だけで、簡単につくれる〉〈シリコン太陽電池の約半分の低コストでつくれる〉などがあり、高い期待を持たれる理由がよくわかる。
書名からもうかがえるように著者が歩んできた紆余曲折の道のりも明かされる。そこから成功を手繰り寄せる秘訣をくみ取る読者もいるだろう。そしてもちろん、ペロブスカイトという素材を発電に用いようとしたアイデアの発端、今や世界に広がる開発競争、その他の太陽電池も含めた光を電気エネルギーに変える仕組みなど新技術に関する知識や動向もわかりやすく解説されている。
さくら舎 1,650円(税込)
宮坂力 著
1953年、神奈川県に生まれる。1976年、早稲田大学理工学部応用化学科卒業。1981年、東京大学大学院工学系研究科合成化学博士課程を修了(工学博士)、富士写真フイルム株式会社入社。足柄研究所主任研究員を経て、2001年より桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授。
2005~2010年、東京大学大学院総合文化研究科客員教授。2004年、ペクセル・テクノロジーズ株式会社を設立、代表取締役。2017年より桐蔭横浜大学特任教授、ならびに東京大学先端科学技術研究センター・フェロー。2020~2023年、早稲田大学先進理工学研究科客員教授。
専門は光電気化学、有機系の光電変換技術、とくにペロブスカイト太陽電池の開発。主な受賞には、クラリベートアナリティクス引用栄誉賞、加藤記念賞、市村学術賞功績賞、山崎貞一賞、英国RANK賞などがある。軽量でフレキシブルなプラスチックフィルム型に作ることができ、太陽光のみならず屋内の照明にも高い効率でエネルギー変換をするペロブスカイト太陽電池は、次世代太陽電池の本命とされ、ノーベル化学賞受賞の有力候補といわれている。
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